「奄美いんまや病院」2周年

「奄美いんまや病院」で診療にあたる伊藤獣医師

適正飼養広げるために 離島への出張診療を

 龍郷町中勝の「奄美いんまや病院」(伊藤圭子院長)がこの4月で2周年を迎えた。最初の1年間は移動診療車のみで活動、1年前に診療所もスタートし、数多くの診療にあたってきた。活動の大きな柱は▽イヌネコの不妊去勢推進▽野生動物の受け入れ▽離島への出張診療―だ。伊藤さんは「ペットを大切に飼ってほしい。予防をちゃんとやれば飼い主もペットも幸せになり、野生動物の保護にもつながる。ペットを飼い始めたら動物病院に連れてきてほしい。これからも適正飼養を広げるための活動を続けていきたい」と語った。

 伊藤さんは大学卒業後、複数の動物病院や野生動物救護施設を経て2013年に奄美大島に移住。奄美大島でもいくつかの動物病院 を経て19年4月に開業した。

 出張診療は現在、喜界島と加計呂麻島で行っている。ペットのイヌやネコなどの小動物を専門に診る獣医師がいないためだ。ワンボックスカーを改造した移動診療車に診療器具、薬、血液検査の機械、手術道具等を積んで、公民館などで診療する。喜界島でほぼ2か月に1回、加計呂麻島では年に4回程度、ともに事前予約制で診療を行っている。昨年11月末には島民からの要請を受けて宝島(トカラ列島)にも初出張。診療件数がある程度まとまれば他の島や宇検村などへの出張も検討したいという。

 喜界島での診療は、4日間で手術40件、診察40件をこなす。手術はほとんどネコの不妊去勢手術で、これまでに喜界島で約400件の手術を行ってきた。継続的な活動の結果、適正飼養に対する島民や行政側(役場)の意識も少しずつ高まり、議会でも話題に上ったという。伊藤さんは「定期的に通うことで少しずつ意識が高まる。これからも続けていきたい」と語る。

 次回の喜界島診療は6月、加計呂麻島診療は7月を予定。また、今年の夏までに、診療所の敷地内に公式では奄美大島で初めてドッグラン(有料)をオープンする予定だという。

 野生動物は19年度40件、20年度64件の持ち込み(死体も含む)があった。これまでの経験に加え、動物園の獣医師に聞くなどして対応している。春は鳥の繁殖期でヒナの誤認保護が多いという。「ヒナのそばには親鳥が必ずいる。巣立ち前のヒナは巣の中に戻し、巣立ち直後のヒナはそのままそっとしておいてほしい。野生生物の保護は勝手に判断せず、まずは相談してほしい」と呼び掛けている

 問い合わせ先は電話090・2085・2649伊藤さんまで。