急激な感染拡大に警戒強める

急激な感染拡大に警戒強める
奄美市 大型連休感染者 人口10万人当り鹿児島市の5・5倍
「離島医療は危機的状況」

 奄美市で初のクラスター(感染者集団)が確認(4月29日)されてから約1週間が経過したが、同市では大型連休期間中も連日、感染者の報告が続き、人口当たりの感染者数は鹿児島市を上回っている。当初、20代~30代の若者が中心だったが、40代以上の感染者も増加しつつあり、市は「これまでに経験したことのない急激な感染拡大傾向にある」と警戒を強めている。感染者の増加に比例し、県本土への搬送も増えており、市の担当者は「脆弱な離島の医療体制を考えると、危機的状況と判断せざるを得ない」と危機感を募らせている。

 市が5日現在でまとめた市内の感染状況によると、4月以降に感染が確認されたのは52人。直近1週間の感染者数は46人で、これまでに同市で確認された感染者(80人)の半数以上を占めた。

 県内で最も感染者が多い鹿児島市(1099人)の人口10万人当たりの直近1週間の感染者数が20人となっているのに対し、奄美市ではその5・5倍にあたる110人。人口規模の近い県内自治体と比較しても10倍近い数値となっている。

 市は、クラスターの発生を受け、奄美大島独自に設定している警戒レベルを最大の5に引き上げ、大型連休期間中も市内の公共施設などを閉館にするなど、最大級の警戒を呼び掛けているが、感染者の増加に歯止めがかからない状況にある。

 市健康増進課は「感染者には無症状の人も多く、気付かないうちに感染し、家族や職場などで感染を広げているケースもある。大切な人にうつさないためにも、家庭内でもマスク着用や手指の消毒、換気の徹底など、感染対策を心掛けてほしい」としている。

 感染者の増加とともに、県本土に移送される感染者も増えている。県新型コロナウイルス感染症対策室は、離島の感染者について「基本的に島内の医療機関や宿泊施設で対応、難しい場合は県本土に移送する」としているが、奄美群島から県本土へ搬送した人数などについて明らかにしていない。また、離島の医療体制については、「県本土への移送など、県全体の医療体制として適切に対処できており、十分な体制が整っている」と、県全体の医療体制には問題ないとの考えだ。

 一方で、県本土への移送は、感染者にとって、精神的、肉体的、経済的な負担も指摘されている。市の幹部職員は「本人だけでなく、家族の不安や負担もより大きい」としたうえで、「脆弱な離島の医療体制を考え、感染しない、させないための行動を第一に考えてもらいたい」としている。