4月29日から5月9日まで車両規制実験が行われた三太郎線東仲間入り口=奄美市住用町=
奄美大島三太郎線周辺における夜間利用適正化連絡会議は9日、奄美市住用町の市道三太郎線周辺での野生生物を観察するナイトツアーの第2回車両規制実験を終了した。同連絡会議は、希少動物の保護や利用者同士のトラブル防止などを目的に同線周辺で利用ルールの導入に向け検討を進めており、実験は昨年11月に続いて2回目。
実験の期間は4月29日~5月9日の11日間、午後7時から翌6時まで。車両は全て事前予約制。同線の東仲間と西仲間双方に入り口を設置し、30分に1台ずつ車両の通行を許可。1時間の利用台数は4台に制限した。
市道スタル俣線は通行止めとし、市道石原栄間線を通行する場合は異常の有無の報告を求めた。
その他、▽時速10㌔以下で走行▽前の車両に追いついたら無理に追い抜かず、前方の車両が左ウインカーを出すまで待機▽対向車が来たときや前の車両に追いついたときはハイビームをやめる▽生き物を探すライトは1車両につき1本▽カエルやイモリ、オタマジャクシ等の生活の場である水たまりはなるべく踏まない▽スタッフは配置せず、監視カメラで利用状況を把握―などのルールを設定した。
また、夜間野生動物観察に不慣れな人にはガイドの同行(有料)を推奨した。結果は以下の通り。
最も交通量が多かった時間帯は午後7時から午後10時まで。
11日間の事前予約は4月29日9台、30日19台、5月1日14台、2日15台、3日15台、4日14台、5日7台、6日9台、7日5台、8日5台、9日1台の計113台。事前予約していなかった車両は51台。予約したが指定の時間にあらわれなかった車両が12台。期間中の利用台数の合計は153台となった。実験を通し、3分の2の利用者は事前予約のルールを守ったが、3分の1は守らなかったという課題が明らかになった。要因として、職員を同線入り口に配置せず監視カメラのみを設置したため、現場で未予約車両にルールの説明を行うことができなかった点があげられる。
通行止めにしていたスタル俣線には5台の車両の進入が確認され、異常の有無の報告を呼び掛けていた石原栄間線では38台の車両が確認されたが、そのうち同会議に報告を届け出たのは7台だった。
奄美野生生物保護センターの山根篤大国立公園保護管理企画官は「今回の実験の主な検証内容は、職員を同線に配置しなかった場合どの程度ルールが守られるかどうか。結果として3分の1の利用者はルールを守らないという課題が見つかった。また、石原栄間線での異常の有無に関する報告率の低さの要因については今後調査を進めていく」と今後の課題をまとめ、「(同線周辺のルール設定は)地域・関係者の方々と取り組んでいる課題。これからも引き続きしっかり調査していきたい」と話した。
またIUCNの勧告が「登録」とされたことを受け、「これまで携わってきた関係者や奄美の自然を守ってきた島民の方々の尽力のたまもの」と関係者へ敬意を表し、「自然の素晴らしさはもちろん、奄美の人々の暮らしの豊かさも島に来た人に感じ取ってほしい」と笑顔を見せた。
同会議は今後、利用者にWebで配布されたアンケートを集計し、監視カメラを検証するなど詳しい調査を進め、世界遺産委員会での審査が行われる今年夏頃までには試行ルールを策定・運用する予定。山根さんは「運用しながら課題を見つけ、柔軟に対応し、よりよいルールをその都度策定していきたい」と今後の取り組みに前向きな姿勢を見せた。