奄美市住用町のマングローブ(資料写真)
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」がIUCN(国際自然保護連合)から「登録」の勧告を受け、初めて迎えた週末。従来、「登録」勧告後の週末といえば、観光客がどっと押し寄せ人でごった返すもの。しかし、相変わらず猛威を振るう新型コロナウイルスとそれに伴う緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令。人の流れが抑えられている今、エコツアー業界では客足が伸び悩んでいるという。
奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の貴島浩介会長によると、「登録」勧告を受けたからといってエコツアーの予約状況や問い合わせが増えたということはなく、むしろコロナ禍で減少傾向にあるという。また、「大々的にメディアで取り上げられたのは勧告を受けた10日くらい」と話し、まだ全国的に周知されていないと指摘した。
奄美の現状について「島内全体がコロナで緊張状態にあるので、(観光客に)来てほしいけど、怖い気持ちもある」と心中を語った。
今後予想される展開として「正式に(世界自然遺産に)認められるのは7月の会議。またそのころには(緊急事態)宣言が解除される可能性もある。そうなったときに人が大勢動く可能性はある」と示唆。コロナが落ち着くまでは静かでゆったりとしたツアーが増えると予想しているという。
一方、「登録後、観光の過度な利用が進むと絶滅の危機に瀕する種も出てくる」と自然への影響を懸念。IUCNの評価結果に記載されていた指摘事項に関して「希少種の交通事故死減少以外にも、ナイトツアーや盗掘など、課題はまだまだ山積み」と指摘した。
貴島会長は今回の勧告を「遺産として残していかなければいけないというメッセージ」として受け取っているという。仮に正式に世界遺産のリストに記載されたとしても、今後生態系が壊れてしまえばリストからは除外されてしまう。「ルールを守って後世に残すシステムを構築していかなければならない」と強調した。
「エコツアーはとにかく自然が第一。今回、当たり前だと思っていたこの島の価値を改めて知った島民も多いかもしれない。これからは、『ただ暮らす』だけではなく『守っていく』という立場に立たなければならない」「住民一人一人の心の意識が問われている」と、重大な局面を迎えている今、島民の自然保護に対する意識が今後を大きく左右すると訴えた。