サンゴ一斉産卵

興克樹さんが撮影したウスエダミドリイシの一斉産卵=瀬戸内町加計呂麻島実久、1日=

海中に浮かぶバンドル(興さん撮影)

 
加計呂麻島実久 興さん撮影
「まるで宇宙」海中漂うカプセル

 瀬戸内町加計呂麻島の実久沖のサンゴで、ミドリイシ属の一斉産卵が確認された。奄美海洋生物研究会会長で自然写真家の興克樹さん(50)が、夜の海を淡いピンク色の卵と精子の入ったカプセル(バンドル)が漂う様子を撮影。興さんがサンゴの一斉産卵を確認したのは今年初という。奄美群島では、これから夏にかけてさまざまな種類のサンゴが産卵していく。

 興さんが一斉産卵を確認したのは、1日の午後8時~11時ごろ。まずウスエダミドリイシの産卵が始まり、午後10時ごろからクシハダミドリイシやコユビミドリイシの産卵が始まった。産卵のピークは数回あり、その際には「前が見えないほどだった」と興さんは話す。同日産卵を確認したのは卓状、樹枝状合わせて約10種。水深3~8㍍で、水温は25度だった。

 バンドルの直径は0・5㍉ほど。ゆっくりと浮上し海面ではじけ、他群体のバンドルの精子や卵と受精。ヌラプラという幼生になる。その後数週間浮遊したあと、適地に定着しサンゴとして成長していくという。

 興さんは「海中は無重力ということもあり、バンドルがゆっくりと浮上する姿は、まるで宇宙から星を眺める模擬体験のようだった」と話し、「一斉産卵は、水温や月の満ち欠けなど、条件がそろう必要がある」と説明。約20年前にオニヒトデの大量発生でサンゴが破壊されていた状況にも触れ、サンゴの回復が遅れている地域に多くのサンゴ幼生が定着するよう願った。