奄美大島南部3町村 土砂災害危険箇所の施設整備率

土砂崩れで通行止めとなり復旧工事が行われた宇検村の阿室集落と屋鈍集落を結ぶ県道曽津高崎線

 

 

「いまだ低い状況」
急傾斜地崩壊事業 西古見地区を整備

 

 

 土砂災害の危険性を示す重要な情報として「土砂災害警戒区域」と「土砂災害特別警戒区域」がある。先月も大雨により県道で土砂崩れが発生し全面通行止めとなるなど地形が急峻な奄美大島南部3町村(瀬戸内町、宇検村、大和村)では警戒区域870カ所、特別区域752カ所指定されているが、こうした土砂災害危険箇所における砂防など対策施設の整備率は5割に届かない低い状況だ。

 26日の県議会一般質問で禧久伸一郎議員=自民党、大島郡区=が取り上げ、兒島優一土木部長の答弁で明らかになった。土砂災害防止法に基づき指定される区域には、土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン=土砂災害のおそれがある区域で、警戒避難体制の整備を図ることを目的に指定)、土砂災害特別警戒区域(同レッドゾーン=イエローゾーンの中でも建築物に損壊が生じ、住民に著しい危害が生じるおそれがある区域で、住宅等の新規立地の抑制などを目的に指定)の二つがある。

 兒島部長の答弁によると、今年5月末時点での指定状況は、県全体で警戒区域2万3037カ所、特別区域1万9058カ所となっている。奄美群島12市町村の場合、警戒2323カ所、特別2082カ所で、このうち奄美大島南部3町村の占める割合は警戒37・45%、特別36・12%となり、それぞれ奄美全体の4割近くに達している。高い割合にある一方、奄美大島南部3町村の土砂災害危険箇所における施設整備率(今年3月末時点)は瀬戸内町32%、宇検村46%、大和村43%にとどまり、「いまだ低い状況にある」(兒島部長)。県では今後、ハード、ソフト両面での環境整備を進めていく。

 「防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策」の実績も説明された。土砂災害を未然に防止する対策として土砂や流木を捕捉する透過型砂防堰堤=えんてい=や避難所等を守る急傾斜地崩壊防止施設などの整備が進められている。このうち急傾斜地崩壊事業では瀬戸内町西古見地区を整備するなど75億円の事業費を投じて県内60カ所で事業を実施している。

 事業効果は、昨年の7月豪雨では1993年の「8・6豪雨」を上回る豪雨があったものの、これまでの施設整備により災害発生件数は202件が69件に、家屋被害件数は162件が8件と大幅に減少した。兒島部長は答弁で「あらためて事前防災の必要性を認識した」と述べた。