6月定例県議会は28日、引き続き一般質問があり、岩重仁子議員=無所属、鹿児島市・鹿児島郡区=、藤崎剛議員=自民党、鹿児島市・鹿児島郡区=、伊藤浩樹議員=自民党、出水市区=、鶴田志郎議員=自民党、肝属郡区=が登壇。奄美・沖縄の世界自然遺産登録に向け、環境省が瀬戸内町の嘉徳川の下流域を「緩衝地帯」に含めることをIUCN(国際自然保護連合)に表明したことが取り上げられた。当局は答弁で、集落の住民に対し、緩衝地帯に編入されても「暮らしへの規制や海岸護岸工事への影響はない」ことを説明したとした。
嘉徳海岸については岩重議員が質問。緩衝地帯拡大のプロセスは松下正環境林務部長が答弁した。それによると、現地調査を行ったIUCNの助言(「嘉徳川の上流から下流までを一体的に推薦地または緩衝地に含めることが望ましいため、どちらにも含まれない下流域を緩衝地帯に含めるべき」)を受け、環境省が下流域を緩衝地帯に含めることをIUCNに表明したという。松下部長は「嘉徳集落の住民に対して、この表明に先立ち県、地元町職員が訪問し、嘉徳川の下流域が新たに緩衝地帯に含まれることになるが、これによる農業を含めて日々の暮らしへの規制はないことや、嘉徳海岸の護岸工事への影響はないことを説明した」と述べた。
護岸工事による嘉徳川への影響については兒島優一土木部長が答弁。嘉徳海岸の護岸工事は、河口部における河川に影響を及ぼす範囲として定められる河川から海に向けて11度に広げた線の範囲外であり、「河川の流れに大きく影響を及ぼすものではないと考えている」と説明。また、集落内には嘉徳遺跡と嘉徳集落遺跡の二つの遺跡が確認されているが、護岸の整備予定地について「嘉徳集落遺跡の一部にかかることから、県では文化財保護法に基づき、2018年6月に県教育委員会と協議を実施。工事の実施において埋蔵文化財が発見された場合には、瀬戸内町教育委員会と協議を行うこととなっている」と述べた。
嘉徳海岸の考え方について兒島部長は国立公園内に位置し自然環境に優れた海岸であることから、事業計画の策定にあたっては海岸水生生物・環境の専門家や地元住民で構成する検討委員会を開催してきた経緯を報告。護岸整備では必要最小限の範囲、安全性が高くかつ従前の自然環境に極力近づけた工法へ十分な検討による整備方針がまとめられ、「この整備方針に基づいて工事を実施することにより地域住民の生命や財産を守りつつ、嘉徳海岸の自然環境や景観を維持していく」とした。
これに対し岩重議員は台風により浸食を受けた砂も戻ってきているとして護岸工事の必要性を疑問視。塩田康一知事に「ぜひ視察を行い、知事の目で見て工事の中止を判断してほしい」と要望した。