インターネットで開催された
【東京】第115回奄美群島振興開発審議会(会長・大川澄人ANAホールディングス(株)常務顧問、委員11人)が28日、WEB会議で開かれ、2020年度の奄美振興開発に関する施策の報告や世界自然遺産に向けての今後の取り組み、コロナウイルス感染防止などについての議論が交わされた。この日は、8人が参加、ネットを介しながらも今回は顔を見ながらの会議となり、審議も熱を帯びたものとなった。
渡辺猛之国土交通副大臣のあいさつの後、大川会長の議事進行で進められた。
事務局から20年度の取り組みの報告では、ICT、IOTの活用、導入実証などが報告された。
委員の飯盛義徳氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)が「大和村ではICTを使って、定住促進をどうやっているのか。チャレンジ人材育成はとても大事、この事業の中に地元の高校生なども参加させては」と質問。事務局は「子どもの教育のレベルを上げることが定住につながるのではないか、という取り組み」と説明。ICTを活用した教育推進事業により、大和村ではインターネット塾を開講し、保護者の経済的・時間的・身体的負担を軽減させ、定住促進している。村の生徒の学習機会の条件不利性を解消させ、地域を支える人材の確保・育成が図られたとした。
高岡秀規氏(大島郡町村会会長)は「徳之島では高校と企業の連携が出来ないかとの要望が出てきているが、働き方改革でカリキュラムが組めない。社会教育の現場で町による人材の確保も必要なのではないか」と述べた。
西みやび氏(西みやび事務所代表)が「チャレンジ事業の焼酎ハイボール、ジビエカレーは、目玉になると思われる。開発の後はどうなるのか」と質問。事務局は「開発後にはまた別の事業があるので、それを利用出来る」と説明した。
高岡氏が「徳之島、沖永良部島、与論で焼酎ハイボール開発に取り組んだ。味も悪くない。8月には鹿児島で物産展を予定している。徳之島の産物をふるさと納税にも提案中」と報告。奄美群島広域事務組合から奄美のジャガイモやニンジンを使ったクレヨンの紹介もあった。
世界自然遺産関係の事業では、小池利佳氏(㈱奄美群島環境文化総合研究所代表取締役)が「道路脇に売り地の看板をあちらこちらに見かけるようになった。景観条例を踏まえて、行政側からコントロールをしていくなど、乱開発にならないようなルール作りを整備してほしい。集落の人が慣れ親しんだ景色を守り、海岸線から海が見えなくなってしまうということなどが起きない方策が必要」と発言。文書での参加となった海津ゆりえ氏(文教大学国際学部教授)から、▽世界自然遺産は、資源の保全と適正な利用により、価値を後世に伝えることが目的の国際条約。目的をどう理解しているか、今一度考えて欲しい▽奄美群島として守り伝えたいものはなにか。対策は考えられているのか。利用だけを考えるという分業に陥ってはいないか▽絶滅危惧種の保全、ルール作りの徹底、観光客の増加にともなう医療保全を考えて欲しい―との提言があった。
コロナ対策では「沖縄にはPCR検査場が主要なところにあり、手軽に利用できる。奄美でも空港などで出来るよう検査場を増やしてはどうか」(小池氏)、
「PCR検査は各島々で出来るようにしなくてはいけない。世界自然遺産登録による経済の取り合いにならないよう長期を見据えたビジョンが必要」(石塚孔信氏(鹿児島大学法文教育学域法文学系教授))などの意見があった。
こうした意見・提言に対し、事務局は「小笠原をみてもPCR検査は有効ではないか。インバウンドが戻ってくる時に考える必要がある。観光マスタープランの後押しと、トップダウンの弊害をなくし、国、県、地元の三者の体制でエコツーリズム推進全体構想を組み立てていきたい」との考えを示した。
最後に大川氏が「『何もしないという景観の維持』も大事。幅広の議論をして、残した方がいいものは残していく。経済効果も考えた、タイムスパンを長く捉えた取り組みを」とまとめた。