希少野生生物保護増殖検討会

希少種の保護増殖事業やロードキル対策について協議した検討会

希少種3種の状況改善
クロウサギ ロードキル対策活発に議論

 2021年度「奄美希少野生生物保護増殖検討会」(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授)が1日、奄美市名瀬の奄美文化センターで開かれた。環境省は、アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミの希少種3種の保護増殖事業の実施状況を報告。石井座長は「状況は改善している。マングース防除事業等の効果と考えられる」と語った。また、ロードキル(交通事故死)対策について活発な論議が交わされた。

 同省は種の保存法に基づいて奄美で国内希少種に指定された同3種の保護増殖事業を進めている。自然状態で安定的に存続できる状態を目指し、同事業10か年の実施計画を14年度に策定。24年3月までにアマミノクロウサギを現在の環境省のレッドリスト絶滅危惧ⅠB類からⅡ類以下、他の2種は同Ⅱ類から掲載されなくなること、を目標に掲げている。会には有識者の検討委員と国、県、市町村担当者、関係機関など約60人が出席した。

 同省は20年度の実施状況について、報告。アマミノクロウサギは増加傾向にあり、分布も拡大。アマミヤマシギはエリアにより傾向が異なるが、安定。オオトラツグミも安定との報告だった。また、オオトラツグミの継続的なモニタリング手法について、報告があった。検討委員からは分析方法や調査手法、調査継続の重要性等について意見が出された。

 アマミノクロウサギのロードキルは20年度奄美大島で50件と過去最多。徳之島では18年に19件で過去最多、20年はそれに次ぐ16件。世界自然遺産登録に向けて、ⅠUCNから対策強化を求められており、22年12月までに対応状況の提出を要請されている。

 同省によると、奄美大島では同種の生息密度が高く道路へ出没しやすく、かつ交通量が多くスピードが出やすい箇所で多発。重点的な対策が必要な道路は①県道85号湯湾新村線(県道612号篠川下福線分岐から赤土山線分岐まで)②町道網野子峠線③国道58号線(役勝三叉路から網野子トンネル名瀬側入り口まで)。徳之島では同種の生息地の拡大による道路への出没数の増加等が要因と考えられ、④県道618号松原轟木線⑤県道629号花徳浅間線(手々~金見)が要重点対策。今後は動物の行動に対してアプローチする対策や通行車両を減速させる対策の導入、具体的にはフェンスの設置や減速帯等を検討するとの報告があった。会場からは「フェンスの試験的設置検討を早急に。コストはかける必要がある」「夜間の看板が見にくい」「点滅する看板はどうか」「海外の事例なども参考に」など活発に意見が出された。

 また、大和村役場企画観光課から「アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)」の進捗報告もあった。

 同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部慎太郎所長は「10か年計画も残り2年半。個体数推定精緻化の後、その後の方針について考えたい。ロードキルは簡単には減らせないが、専門家に相談しながら県、5市町村、3町で普及啓発によらない対策を考えていきたい」と話した。

 アマミノクロウサギの生態研究に30年携わっている、検討委員の沖縄大学山田文雄客員教授は「世界自然遺産のかたちで世界の財産として守っていきたい」と語った。