奄美大島地区 希少野生生物保護協

希少野生生物の保護対策について議論された協議会

ロードキル対策など共有
大量採集まずはマナー向上呼び掛け

 奄美市名瀬永田町の奄美会館で8日、2021年度奄美群島希少野生生物保護対策協議会(奄美大島地区。事務局=県自然保護課)が開かれた。世界自然遺産登録を念頭に、遺産としての価値の維持改善を図るため、希少野生生物の保護に関する対策を協議することが目的。環境省・県・警察署・建設関係・5市町村・自然保護関係者など37人が参加した。

 「昆虫等の大量採集、トラップ設置」に関して、同省から、クワガタ類やシリケンイモリの大量採集等があったと報告があった。手慣れた採集者の多くは関係法令を熟知し、法令違反にならないように「規制対象外種」を「規制区域外」で大量採集し、持ち出しているのが実態。持ち出しをあきらめた採集者が空港に放置するケースも。これについて、県から▽採集用のトラップを仕掛ける際には、必ず土地所有者の許可を得る▽トラップには氏名等の設置者がわかる情報を記載する―などの採集マナー向上呼び掛けの提案があった。会場からは「希少種、普通種を含めて採集禁止にできないか」「持ち出し数制限をかけられないか」などの意見が出た。一律の捕獲規制は最終段階とし、まずはマナー向上を呼び掛ける方向に。

 「密猟密輸対策の状況と監視体制の強化」については、同省から関係者間での夜間合同パトロールの提案があった。県、5市町村、警察などが参加の意向を示し、今年も夏季に、希少クワガタ等発生シーズンに行う予定。

 IUCNからも要請のあった「アマミノクロウサギの交通事故防止対策」については、同省から物理的な構造物の設置として▽道路から逃げやすくするための側溝へのふたの設置▽自動車の速度を減速する構造物(減速帯、ハンプ等)▽道路への侵入防止措置(多発地点への侵入防止柵の設置)―などの提案があった。会場からは「クロウサギを発見しやすいよう、道路を白っぽくするといいのでは」という意見や、イリオモテヤマネコのロードキル対策経験者から「簡易柵は効果がある」などの意見があった。

 その他、果実(種子)に硬いトゲを持つ外来植物メリケントキンソウの紹介や、「奄美大島・徳之島公共事業における環境配慮指針」の報告があった。

 県自然保護課の宮澤泰子課長は「ロードキル対策などを共有できたので、これから関係機関で話し合いながら、効果的な対策を進めていきたい」。同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部慎太郎所長は「普及啓発に頼らない、公共事業的なロードキル対策を建設部局と共有できてよかった。今後、具体的に検討していきたい」と語った。

 なお、徳之島地区の同協議会は9日に開かれ、会議終了後、合同パトロールも行う。