『琉球弧・生き物図鑑』

進化の島の貴重な生態紹介
山口喜盛さんら著 奄美・沖縄の動植物567種

 今月下旬の世界自然遺産登録決定が見込まれる奄美大島や沖縄島など琉球列島の島々に生息する動植物567種を網羅した『世界自然遺産の島々 琉球弧・生き物図鑑』(山口喜盛・山口尚子著)=写真=、が南方新社から刊行された。幅広い分野の生き物が1冊にまとめられており、各島独自の進化を遂げた種や島ごとに分化した亜種も多く掲載、琉球弧の自然の特徴なども詳しく解説している。

 著者の山口喜盛さんは、神奈川県自然保護協会生物多様性保全委員などを務めながら、奄美大島などを訪れ、自然観察などを続けている。著書の中で、「12年前、学芸員として勤めていた丹波(神奈川県)のビジターセンターを途中退職し、再び奄美大島を訪れた時から、琉球列島の生き物たちとの出会いを楽しむ旅が始まった」と記している。

 まず、約1200キロメートルに渡って連なる琉球列島の島々の特徴でもある、亜熱帯の気候に着目、冬でも暖かな島々が育む多様な植生や、列島の成り立ちなどについて解説している。

 また、危険な生き物や外来動物の脅威、貴重な生態系を壊さないための取り組みとして、生き物との接し方やロードキルを防ぐための車の運転方法、むやみな生き物採集の防止などを呼び掛けるとともに、各島々の楽しみ方なども記載している。

 このほか、島ごとに分化した亜種についても、その違いが分かるように写真で紹介。哺乳類や野鳥、両生類、は虫類、昆虫、甲殻類、植物など広範囲の生き物を知ることができる貴重な1冊となっている。

 A5判、158ページ、定価1980円(税込み)、発行部数3000部。全国主要書店で販売しており、奄美の書店でも購入できるという。同書に関する問い合わせは南方新社(電話099―248―5455)へ。