大島無念、鹿実にコールド負け

【準々決勝・鹿児島実―大島】1回表大島二死一塁、4番・田尾が内野安打を放ち好機を広げる=平和リース

奄美勢、全チーム姿を消す

 【鹿児島】第103回全国高校野球選手権鹿児島大会第14日は18日、鹿児島市の平和リース球場で準々決勝2試合があった。

 奄美勢は大島が第3シード鹿児島実と対戦。中盤、鹿実の強力打線につかまり0―8で七回コールド負けだった。今大会の奄美勢は全チームが姿を消した。

 第15日は24日、同球場で準決勝2試合がある。

 【評】大島は初回、二死から3番・泉、4番・田尾が連打で好機を作るも生かせず。三回に先制点を許すと、四回裏は4番・城下、5番・赤嵜に連続長打を浴び、守備も乱れて2点を失った。五回は二死一二塁で6番・濵田に3ランを浴び、点差が6点に開く。六回からはエース大野から2番手・前山にリリーフしたが傾いた流れを止められず更に2点を失った。打線は五回先頭が四球で出塁するも併殺で生かせず。六回は二死から二三塁と得点圏に進めたが得点ならず。七回は死球、代打・西田の左前打で一二塁とするも最後は代打・中崎が併殺で打ち取られ、コールド負けだった。

勝負所の差、歴然 強豪私学の壁、分厚く
大島

【準々決勝・鹿児島実―大島】3回裏、ピンチの場面でマウンドに集まる大島ナイン=平和リース

 初の夏4強を目指して、春準決勝で敗れた鹿児島実に挑んだ大島だが、強豪私学の壁は想像以上に分厚かった。「鹿実に勝つために練習し、対策も立ててきたがコールド負け。悔しい」と安田秀太郎主将は唇をかんだ。

 鹿実の先発は赤嵜。春準決勝で対戦し、4安打完封された左腕を今回も打ち崩せなかった。春と同じく、右打者の膝元に食い込む変化球を打ちあぐねた。少ないながらも何度か好機は作った。初回、五―七回と走者を出し、得点圏に進め、複数の走者を出した回もあった。だが肝心の「勝負所」(塗木哲哉監督)で身上の「打ってつなぐ」真骨頂を発揮できなかった。

 鹿実打線は春以上に力強さを増していた。エース大野は140㌔台の球威も回復し、今大会一番の出来だったが、三回からの集中打で崩された。「追い込まれてもファールで粘り、四球やヒットを打てる。見事だった」と塗木監督も脱帽する。勝負所をものにした鹿実、できなかった大島、その差は歴然としていた。

 「勇気を出して今までやってきたことをやった」と安田主将。五、七回は無死で走者を出して果敢に打っていったが併殺。「甲子園ベスト8」を目標に掲げ、鹿実クラスのチームに勝って県予選を突破するために身上としてきた戦法を貫いた。ただ最後の夏「結果を出す」(安田主将)力をつけるところまでは引き上げきれなかった。

 その高い志と実践の繰り返しが、過去の先輩たちに並ぶ春4強、夏8強の原動力になったことは間違いない。夏8強以上の「ステージの上がった舞台」(塗木監督)を突破するのは容易ではない。挑み続ける以外、道を開く術はない。「(大野)稼頭央や武田、西田、このチームで経験を積んだ下級生たちがきっとやってくれると信じる」。過去の先輩たちと同じ想いを安田主将も後輩たちに託した。(政純一郎)

「強敵」との勝負を楽しむ
大島・大野稼頭央投手

 この4戦で調子は一番良かった。直球の最速は140㌔台。立ち上がり、先頭の平石に142㌔の直球を長打されたが、次打者の送りバントを小飛球に打ち取り、飛び出した平石を好フィールディングでアウトに仕留めピンチを脱した。

 二回、4番・城下主将は県下屈指の好左打者。140台の直球も鋭く振り抜き4球ファールで粘る。なかなか打ち取れなかったが「強いチームと当たれば、強敵が増えてくる」のは織り込み済み。好打者との力の勝負がむしろ「楽しい」と思えた。左飛に打ち取り第1ラウンドは勝利。しかし、「ファールで粘る」打線に徐々に苦しめられることになる。

 三回は1番・平石に4球粘られ、高めに浮いたボール球を中前適時打された。「浮いたボールを逃さないのはさすが」だと思えた。2ストライクまでは追い込めるが、そこからファールで粘られ、ボール球は見極められ、四球、痛打を浴びた。五回裏、6番・濵田に浴びた3ランが致命的だった。気が付けば、五回裏が終わった時点で104もの球数を投げさせられていた。

 六回、同じ2年生の前山にマウンドを譲ったが鹿実打線の勢いは止まらない。一死満塁で7点目を奪われた直後に再びマウンドに上がった。「(前山)龍之助から『頼むぞ』と言われて気合が入った」。4番・城下、5番・赤嵜を飛球で打ち取り、犠飛で1点は失ったが、エースの意地を見せた。

 「勝負球をしっかり低めに投げられなかったのが敗因」と自己分析。直球以外でも勝負できる変化球を身に着け、ボールの質をもう一段上げていかなければ目指す舞台に届かないと痛感した。「秋春は負けなしで県を制し、夏8強以上の私学との対戦でも負けない力をつける」という新しい目標が見つかった。(政純一郎)