広域災害備えた救急医療体制構築へ

研修会でEMISの入力方法などを指導する高間医師

県立大島病院救急救命センター EMIS入力など訓練
台風シーズン前に

 本格的な台風シーズンを前に、大規模な自然災害の発生に備えた関係機関の連携や広域災害救急医療情報システム「EMIS」(イーミス)入力訓練などを行う研修会が4日、奄美市名瀬の県立大島病院救命救急センターであった。同センター長の高間辰雄医師は「離島災害 孤立との闘い」について講演、「南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合に備え、平時から広域的な連携システムを構築し、被災者支援や重症患者を島外搬送する避難計画を準備する必要がある」などと指摘した

 研修会は同センターなどが企画。テレビ会議システム「Zoom」やYouTubeを使ったオンラインによるWeb開催には、奄美群島の病院など9医療機関と奄美市などの行政、消防関係者ら約40人が参加した。

 オンラインでの講演会では、高間医師が、台風や地震などによる大規模災害により、群島内の医療機関が被災した場合なども想定した防災訓練実施の必要性を指摘。南海トラフ地震などの大規模災害が発生した場合、「奄美などの離島まで支援が行き届かない可能性がある。県本土と外海離島の奄美では置かれた状況が全く違う」などと指摘。県などが主催する大規模災害訓練だけに頼らず、奄美群島の自治体や医療機関などが連携した、奄美独自の訓練の開催などを呼び掛けた。

 EMISは、1995年に発生した阪神淡路大震災後に開発されたシステムで、災害時の適切な情報の収集と提供を目的としている。医療機関の患者受け入れ可否の照会や被災した病院の状況、稼働可能な職員の確認などの情報を一元化、医療機関の混乱により患者対応ができない事態を回避、必要な支援を迅速に提供することなどが期待されている。現在は、新型コロナウイルスによる患者搬送や警戒地域の情報などが共有されている。

 一方で、全国的にはまだ、情報の入力方法や見方などが分からず、活用できずにいる医療機関も多く、高間センター長によると、過去、奄美群島に大型台風が接近した際のシステム利用率は47%にとどまったという。高間センター長は、「県内では比較的利用している方だが、まだ足りない。100%を目指したい」などと、EMISを活用した広域連携による災害対応の推進を呼び掛けた。