農林水産省植物防疫所は、果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの誘殺状況(週まとめ)を公表した。最新の8月3~9日の週では鹿児島県内は3週連続誘殺なしだが、長崎県は同週も1匹の誘殺があり、今年度に入っての誘殺数は計51匹で、前年度の1匹から大幅に増加している。
長崎県での今年度の誘殺は5月25~31日の週に5匹確認して以降、毎週誘殺があり、7月6~12日と同13~19日の2週にわたってそれぞれ14匹(週まとめで最多誘殺数)確認された。今月9日現在の合計数を市町村別にみると長崎市が最多の25匹で、全体の半分を占めている。次いで西海市の8匹となり、同県農産園芸課によると、県内の西側での誘殺が目立つという。
今年度の急増を受けて長崎県は、防除・まん延防止のため、誘殺板(テックス板)設置など防除対策を強化。ベイト剤の散布にも乗り出している。同県はビワの産地として知られるが、県農産園芸課は「ビワやイチゴなど、ミカンコミバエが産卵する果実(寄生果実)を園地や庭先に放置すると、ミカンコミバエの発生源となる恐れがある」として誘殺が確認された地域周辺の農業者・住民に対し、「とり残した果実は放置せず、地中深くに埋設するか、ビニール袋に入れて処分するなどの対応をお願いしたい」と呼びかけている。同課は奄美新聞の取材に「今月10日にも1匹の誘殺が確認された。誘殺が止まらない状況にあり、非常に危機感を持っている。農産物の移動規制となるような事態を招かないよう引き続き防除対策を強化したい」としている。
植防が公表している今年度の誘殺状況で九州・沖縄の県別では長崎以外は、沖縄63匹、鹿児島22匹、熊本24匹(すべて天草市)、佐賀1匹、福岡同。長崎県の数は、台湾など周辺発生国からの飛来(季節風や台風など強風が起因)から毎年、侵入警戒対策が行われている沖縄県に次ぐ数。ミカンコミバエの生態に詳しい専門家は「長崎県での誘殺は、発生が確認されている中国南部からの飛来の可能性があるのではないか。日本国内への侵入を防いでいくためにも、台湾だけでなく中国を含めた共同研究を進めていくべき。東アジア全体で取り組む問題となっている」と指摘し、国家戦略の位置づけで国同士で進める共同研究の充実・強化を求めている。