アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)の建設予定地
大和村は「アマミノクロウサギ研究飼育施設(仮称)」の設置計画を進めている。交通事故などでけがを負った国の特別天然記念物アマミノクロウサギの治療やリハビリ、展示の機能を担う施設で、同村思勝の「まほろば水と森公園」内敷地に建設する。現在、建築や展示の詳細を検討中で、2024年度のオープンを目指す。
施設は、交通事故など何らかの理由でけがを負い、療養やリハビリが必要な個体を保護し、自然に返すまでが目的。これまで動物病院で治療を終えた個体は、鹿児島市の平川動物園に移されるなど、奄美で受け入れられる場所はなかった。同施設では、治療後の容体の安定した個体を受け入れ、回復のための飼育を手掛ける。
村企画観光課によると、施設は鉄筋コンクリート造り平屋建てで、延べ床面積681平方㍍、展示エリア284平方㍍。周囲には群倉=ぼれぐら=や奄美野生生物保護センターがあり、周遊する仕組みもつくっていく予定。
施設では、治療・リハビリのほか、▽生態研究▽生体展示・ミュージアム▽教育機能―などを掲げている。想定する来場者は地元の小中学生や地域住民、観光客、研究者など。
展示では、クロウサギの生態の基本情報だけでなく、マングースやノネコ対策、ロードキル(交通事故死)問題、クロウサギがタンカンやダイコンなどの農業被害を起こしている現状も伝える。また、大和小中学校で飼育していたこと(1963~90年)も紹介する。野外放飼場では、なるべく自然の状態で生息できる環境をつくり、ガラス越しに観察できるようにする。夜行性のクロウサギの活動を昼間に来た来場者が見られるよう、昼夜逆転の生体展示室も設ける。レクチャールームは基礎データをとってわかったことを展示したり、外来の研究者の発表の場にもなる予定。
管理・運営体制は、適正な専門知識や飼育経験を持った団体や個人に委託する予定だが、委託先が見つからない場合は、村直営となる。その場合はスタッフを全国から公募する。また、地元獣医師との連携も図っていく。
同課の担当者は「観察できるクロウサギがいない場合もあるため、それでも地元民や観光客が来たいと思える展示を設計したい。ナイトツアーの観察マナーなどを学ぶ場にもしていきたい」と話した。
同施設は2017年から協議を開始。19年から村や環境省、有識者10人からなる同設置検討委員会を立ち上げ、20年10月に設置・運営の基本計画を策定。総事業費は約5億円。21年度は建築実施設計と展示設備等実施設計を行い、22年度には本体工事着工、23年度に展示設備等着工、24年度に運用開始を予定している。