宇検村宇検で第5回対馬丸慰霊祭

慰霊碑前で献花し、犠牲者の冥福を祈った参列者

犠牲者の冥福、平和祈る
昨年に続き、規模縮小し開催

 対馬丸慰霊祭実行委員会(委員長・植田英吉宇検集落区長)は28日、2021年「第5回対馬丸慰霊祭」を宇検村宇検の船越海岸慰霊碑前で行った。昨年に続き、新型コロナウイルス感染症予防のため、参列者を限定し規模縮小して午前10時から開催、参列者は77年前に発生した「対馬丸事件」の犠牲者の冥福を祈り、平和への誓いを新たにした。実行委員会によると、開始時刻に合わせて宇検集落の放送で慰霊祭実施を集落民に周知し、黙とうを呼び掛けた。

 慰霊碑は、集落民らでつくる実行委員会が17年3月、村の助成を受けて建立。同年8月に第1回慰霊祭を開催以降、毎年8月に慰霊祭を開催してきた。

 慰霊碑横に設置された碑文には「1944年8月22日午後10時すぎ、沖縄から学童、一般疎開者を乗せて長崎へ向かっていた『対馬丸』が悪石島付近で、米国潜水艦によって撃沈された。犠牲者およそ1500人。うち学童780人余り、就学前の幼児も合わせると1000人余りの幼き命が一瞬にして奪われた」「当時、ここフノシ海岸(船越海岸)や枝手久島をはじめ、周辺一帯には多くの遺体が漂着した。あまりの無残さにとても正気では埋葬できず、焼酎をあおり、感覚を麻痺させながら浜に横穴を掘るなどして、村民が手厚く埋葬した」「一方、21人の生存者は、1週間の漂流の末、宇検村や近隣町村に漂着し、村民の必死の救出作業と手厚い介護を受け、尊い命が救われた」などの内容が記されている。

 今年の慰霊祭には、宇検集落役員、久志小中学校の徳永由美子校長ら15人が参列、最初に参列者全員で犠牲者に黙とうをささげた。植田宇検集落区長(66)は式辞で「コロナ禍の影響で宇検集落役員のみでの開催となった。(沖縄の)対馬丸記念館関係者、久志校区の児童生徒らの参加がないのが非常に寂しい限り」「今年も沖縄での慰霊祭への参加を計画したが、コロナ禍の影響で見送ることにした。今後は2年に一度は参列できるよう努力していきたい」などと述べた。

 元山公知村長は、追悼のことば(代読)で「対馬丸事件から77年目の夏、コロナウイルスの影響で社会は大きく変わろうとしているが、平和への変わらぬ思いを伝えていくことこそが、今を生きる私たちに課せられた重要な使命。コロナ禍収束の際には、沖縄との交流も再開し、子どもたちに平和学習を通して、平和の尊さを語り継いでいくことを固く誓う」などと述べた。

 参列者が献花し、犠牲者の冥福を祈った。

 参列した大島安徳さん(94)は「(当時を知る)生き証人の一人として子どもたちに戦争のむごさ、平和の尊さを伝えてきた。今後も伝えていきたい」と話した。