写真随想「いのちは誘う」ルーツの島に熱い思い

写真家・宮本隆司氏

徳之島2世の写真家・宮本氏

 【徳之島】ルーツの島を包み込んだ「徳之島アートプロジェクト2014」を企画運営した徳之島2世の写真家宮本隆司氏(東京都)が、写真随想『いのちは誘う』(平凡社)=写真=をこのほど出版した。ピンホール・カメラなども通した原初の闇と光の芸術など思いと、古代日本の風俗が色濃く残るルーツの島への熱い感慨をつづっている。

 宮本氏は1947年、東京生まれだが、両親が伊仙町の出身。多摩美術大学、住宅専門誌編集委員を経て76年に写真家として独立。「建築の黙示録」や「九龍城砦」展、阪神・淡路大震災の被災写真展などで高い評価を集め、個人写真集も10数冊。

 第14回木村伊兵衛写真賞、第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展金獅子賞、第55回芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章などに輝いている。

 そして2014年(当時・神戸芸術工科大教授)に、友人の建築家古谷誠章氏(早稲田大教授)と3年越しで構想を練った「徳之島アートプロジェクト2014(テーマ・母浜回帰)」を実現。写真や現代アートなど多彩なアーティスト7人が協力。春、夏合わせ計約55日間、アート作品で島を包み込み反響を巻き起こした。

 写真随想『いのちは誘う』は四六判、232ページ。第1部「見るためには闇がなければならない」では、光の芸術である写真の成り立ち。また、「母浜回帰」で父の出身地・面縄海岸にも登場させた巨大ピンホール・カメラなどが持つ表現の可能性の探求なども解説。

 そして第2部「いのちは誘う」では、(1)父と母の島―アートプロジェクト2014について(2)原初からの力―井之川の夏目踊り(3)泉芳朗は島をどのように表現したのか(4)一字姓だった宮に本がつけられた―で構成。

 これまでの各研究者らの文献も縦横無尽に引用し再構成し、「呼び戻され、響き合うルーツの島」の基層を鋭く見つめ、独自の視点で再評価もするなど熱い思いを写真とともにつづっている。
 本体価格3190円(税込み)。8月4日初版第1冊発行。購入は全国書店か通販で。㈱平凡社(電話03―3230―6573)。