奄美大島の世界自然遺産登録後、国立公園の特別保護地区で発見された違法トラップ(環境省提供)
世界自然遺産に登録された奄美大島で、禁止されている昆虫採集のためのトラップ(わな)が国立公園内の特別保護地区で確認されている。環境省によると7月に1件、登録後の8月にも1件確認。関係機関は監視体制強化に乗り出しているが、禁止区域の周知と同時に昆虫の採集ができる地域もあることから、正確な情報の収集を求めている。
奄美群島は2017年3月に国立公園に指定されたことで、同公園内の特別保護地区や特別地域では、すべての動植物の捕獲・採取、昆虫採集のためのトラップ設置といった行為禁止など規制されている。しかし奄美大島では島内で違法に採集した生きものを島外へ持ち出そうとする人や、林道内に昆虫捕獲のためとみられる無許可のトラップが大量に発見されるなど、密猟・密輸対策が課題となっている。
環境省奄美野生生物保護センターによると、夏場に入り特別保護地区での昆虫採集を目的にした違法トラップは7月5日に大和村、8月14日には瀬戸内町で見つかった。世界自然遺産登録後の確認は同日、瀬戸内町が独自に実施している希少種保護のためのパトロール時に発見されたもの。町担当職員に連絡があり、翌15日に町職員が設置場所が、町有地・特別保護地区であることを確認。環境省に連絡があったのは16日で、警察と一緒に現地確認したところ、特別保護地区に違法トラップが二つ設置されているのを確認した。二つの距離感は5、6メートルで、靴下、ストッキングにバナナを入れたものを、針金を用いて木に巻き付けるように設置していたという。昆虫はかかっていなかった。
違法トラップの設置は特別保護地区以外でも確認され、環境省のほか、巡視にあたっている島内5市町村にも情報が寄せられている。増加傾向にあり、関係機関はセンサーカメラの増設やパトロールなどの監視体制強化に乗り出している。奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「事情を知らない人の行為も考えられる。島の人、島の外から訪れる人はきちんと情報を把握してほしい。昆虫採集はどこなら可能か、どこでは規制(法律や条例違反)されているのか、研究目的など許可の必要性を含めて確認や関係機関に問い合わせてもらいたい」と指摘している。
なお、環境省は「奄美大島での動植物の捕獲・採取の注意」として禁止されている動植物リスト、国立公園の規制マップをホームページでも公開している。