クロウサギ交通事故

秋以降、全体半分弱と多発
防止へ15日からキャンペーン 奄美大島・徳之島

 国の特別天然記念物で、環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されているアマミノクロウサギは、世界自然遺産に登録された奄美大島・徳之島の野生生物のシンボルだが、例年9月以降、交通事故死が増加する傾向にある。同省の2000年~20年のまとめでは9月~12月の4カ月間で全体の46・98%と半分弱を占めており、防止に向けて今月15日から11月15日までキャンペーンが展開される。

 アマミノクロウサギ交通事故防止キャンペーンは、環境省沖縄奄美自然環境事務所奄美群島国立公園管理事務所、同徳之島管理事務所の主催。関係行政機関や観光団体も共催(協力)する。地域住民、観光客などに安全運転を呼び掛け、クロウサギをはじめとする野生生物の保護に関する普及・啓発を図るのが目的。

 今年度は特別イベント、関係各所におけるポスター掲示、チラシの配布、広報誌での発信、空港ロビーでの特別展示などを計画。このうち環境省職員がチラシ配布などを行う特別イベントは、18日午後2時から奄美空港到着ロビー、徳之島は「秋の全国交通安全運動」と共同開催で21日に3町で予定。当日の天候や新型コロナウイルス感染症の感染状況などによっては、場所変更または中止の可能性があるという。

 環境省のまとめによると、クロウサギ交通事故死亡件数(奄美大島および徳之島の合計)は、00年1月~今年7月末現在で計394件。20年は奄美大島で過去最多の50件もあり、徳之島は前年と同じ16件だった。今年は7月末現在奄美大島で23件、徳之島で8件発生。奄美大島は過去最多だった20年の約半分だが、すでに19年の1年間の数に達している。累計の394件中、傷病個体として保護されたのは17件(全体に占める割合は4・31%)のみで、他は死亡した状態で発見された。

 交通事故件数を月別でみると、9月以降増加。00年1月~20年12月の月別累計件数では、9月42件、10月51件、11月31件、12月47件となり、この4カ月合計で171件と、全体の46・98%を占めている。

 交通事故(ロードキル)の多発道路は、奄美大島・徳之島とも近年、世界自然遺産地域や緩衝地帯周辺でも多発している。こうした状況から環境省では通行注意を促すため、今年は交通事故多発道路を示した地図を載せた啓発リーフレットを作成、周知を図る。運転にあたっては、▽林道ではアマミノクロウサギが急に飛び出してきても、すぐに止まれる速度で運転▽クロウサギは林道のみならず、県道・国道上にも出現することがある。特に徳之島では、これまでクロウサギが見られなかった場所での交通事故が増えている。クロウサギが活動する夜間は特に注意し、ゆとりのある運転▽クロウサギの交通事故が多発している地点には、警戒標識などが設置されている。特に注意―を呼び掛けている。