朝山市長(左)に、巨大滝の名称公募の中止を求める要望書を提出する栄町内会長(右)
奄美市名瀬小湊地内で確認された落差181㍍の巨大滝の名称を同市がホームページなどで公募したことについて、地元の小湊町町内会が17日、市に対し、滝の名称の全国公募を取り止め、地元に伝わる名称を付けることなどを要望した。同町内会の栄嘉弘町内会長(67)らが市役所を訪れ、朝山毅市長に要望書を手渡した。同市は住民らの要望を受け、公募を取りやめる方針を明らかにした。
巨大滝を巡っては今月10日、朝山市長らが記者会見を行い、地籍調査で衛星などを使って測量したところ、確認されている滝としては、落差が九州一であることが判明したと発表。正式な名称がなかったことから、名前を公募し、滝に関する情報提供などを広く求めていた。
要望書は、滝の存在について「小湊集落では昔から認識されていて、『クルキチ(黒い岩)の滝』『フーチブルの滝』の名称で親しまれ、愛着のある滝」などと指摘、▽滝の名称の全国公募取り止め▽地元の名称を付けて―などと求めている。また、10日の記者発表まで集落への事前説明がなかったことから、「今後は集落に対し事前に情報を知らせてもらいたい」などとした。
要望書を受け取った朝山市長は「地名は歴史の中における大切な財産。地元の皆さんに情報を伝えることなく発表したことは大変申し訳なかった」などと謝罪。今後は、地元住民や市ホームページなどに寄せられた滝に関する情報などを基に、名称の選考作業を進める考えを示した。
栄町内会長は「奄美が世界自然遺産に沸く中で、水を差すようなことになってしまったが、名称は地元住民にとって大切なもの。滝の落差を調査していただいたことには感謝しており、小湊地区が全国から注目されることは大変うれしい。今後は、滝を地域の活性化に生かせるよう協力していきたい」と話した。
小湊地区の出身で、同地区の歴史などに詳しい同市名瀬朝仁新町の栄田馨さん(73)は「滝の上流には昭和初期まで安木場という集落があり、海上を見張る遠見番所のような役割を果たしていた。地域の歴史や文化にも配慮しながら名称を付ける作業を進めてほしい」などと話した
同市は名称の公募を中止し、滝に関する情報提供のみを募る方針で、同日、ホームページで名称募集を締め切ったことを報告した。市プロジェクト推進課によると、これまでにインターネットで全国から約3200件の応募があったほか、ファクスやハガキでの応募もあったという。