世界自然遺産に登録された奄美大島の照葉樹林の森
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されたことで、鹿児島県には三つの世界遺産が存在する。国内のみならず「海外からの観光客誘致において大きなセールスポイントになる」として県は、鹿児島と屋久島、奄美群島を結ぶ世界遺産クルーズなど新たな周遊ルートの開発などに取り組む方針だ。
三つの世界遺産は、1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録された「屋久島」、世界文化遺産として2015年に登録された「明治日本の産業革命遺産」、そして今年7月26日に登録された奄美・沖縄の世界自然遺産。
普遍的な価値が認められたことを示す世界遺産。県のホームページによると、屋久島は世界的にも稀な樹齢数千年の屋久杉や多くの固有種や絶滅のおそれのある動植物などを含む多様な生物相を有するとともに、海岸部の暖温帯から山頂部の冷温帯に及ぶ植生の典型的な垂直分布が見られるなど「特異な生態系と優れた自然景観」が評価された。また、鹿児島市にある旧集成館、寺山炭窯跡、関吉の疎水溝の三つの資産は、幕末から明治期の重工業(製鉄、製鋼、造船、石炭産業)における「急速な産業化の道程を証言する産業遺産群の構成資産」であり、九州・山口を中心とする8県11市の23の資産で構成される世界文化遺産の一つ。
この三つの世界遺産を生かした県全体における観光振興策は、開会中の定例県議会代表質問で取り上げられた。答弁に立った悦田克己観光・文化スポーツ部長は「(三つも世界遺産を有するという)セールスポイントを最大限生かし、各市町村や観光関連事業者など関係者と連携して鹿児島と屋久島、奄美群島を結ぶ世界遺産クルーズなど新たな周遊ルートの開発、商品化、効果的なプロモーション等に積極的に取り組み、さらなる誘客や観光消費額の増加など本県全体の観光振興につなげたい」と述べた。
奄美の世界自然遺産登録について塩田康一知事は「今後とも国、地元市町村等との連携を図りながら、奄美の素晴らしい自然が次の世代に継承されるよう着実に取り組む」との決意を示すとともに、登録効果については「沖縄県との交流の促進や両地域を周遊するルートづくりのほか、屋久島と奄美の二つの世界自然遺産を活用した島旅の魅力発信等による誘客促進などの取り組みを、さらに積極的に進める」と述べており、沖縄との交流についても意欲をみせている。