防災対策として護岸工事が計画されている瀬戸内町の嘉徳海岸
9月定例県議会は21日、引き続き代表質問があり、県民連合の遠嶋春日児議員=薩摩川内市区=、公明党の成尾信春議員=鹿児島市・鹿児島郡区=が登壇。瀬戸内町の嘉徳川は、海岸周辺の下流域も世界自然遺産の緩衝地帯に編入されたが、海岸で計画されている護岸工事の見直しを求める質問があった。県当局は「工事の実施を認識したうえで登録が決定されたものと理解している」と述べ、現計画の通り事業を進めるとした。
嘉徳川下流域の緩衝地帯編入については松下正環境林務部長が答弁。世界自然遺産の緩衝地帯について「登録地の効果的な保護を目的としており、登録地を包むように設定し、補完的利用および開発規制を行う地域」と説明したうえで、「IUCNが『奄美大島において最後に残された自然な流れの嘉徳川の流れを担保するため、上流から下流まで一体的に推薦地または緩衝地帯に含まれていることが望ましい』として、どちらにも含まれていない『下流域を緩衝地帯に含めるべき』との助言を受けて緩衝地帯に含めることになった」と説明した。
遠嶋議員は「河川や海岸を含む集落一帯が緩衝地帯として編入されたが、この位置づけをどう受け止めているか。この海岸の護岸工事計画について、見直しを含めどのように協議・対応がされているか」と質問。兒島優一土木部長は「嘉徳海岸一帯の緩衝地帯への編入にあたっては、IUCNに対し防災面の必要性から護岸の設置を行うものの、護岸の全面を砂で覆い、アダン等の植栽を行うなど生態系や環境を考慮した工法を採用していることを説明している」と述べ、工事実施認識のうえでの登録決定との考えを示した。
遠嶋議員は現地の写真を示して「砂はもとに戻った状態にある。嘉徳川がまっすぐ海に延びるよう重機を入れた改修をしたため、台風により浸食が起きたとの情報もある。自然に人工的に手を入れたため被害が出たのではないか。人工の構造物をつくるのは、自然破壊につながる」として計画の見直しを求めた。
これに対し兒島部長は「砂は戻ってきているが、砂丘は戻っていない」としたうえで、「砂丘は、長年の間に砂が吹き上げられ積み重なっていく。今の状態は吹き上げられただけの非常にルーズな状態で、台風が来たらすぐに持っていかれると考えている。従前の砂丘の効果が発現するまでの間、こうした護岸でしっかり守る必要がある」と述べ、整備方針でまとめた工法で計画を進める方針に変わりはないとした。
成尾議員が離島振興対策の中で、台風などの荒天時に相次ぐ与論港における定期フェリーの抜港対策を質問。兒島部長は答弁で定期フェリーが入港できない抜港が直近の3カ年平均で年38回あり、年間の運航計画に占める割合の約5%となっていることを報告。抜港の主な原因として「防波堤では防げない南東方向の強風やうねりによるものと船社から聞いている」とし、現在、過去の抜港や欠航時における風速や波浪状況の確認調査を進めており、「これらの調査結果を踏まえ船社や地元の意見もうかがい、どのような対策が必要か検討したい」と述べた。