「ヤングケアラー」県、実態調査へ

早期発見・把握を提言

 家族やきょうだいの世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」。日々の生活に追われて周囲に相談できない子どもも多いとみられており、九州・沖縄では福岡県や熊本県などで市民団体や行政が相談窓口の開設や実態把握に動き出している。厚生労働省は2022年度当初予算の概算要求にヤングケアラーへの支援を重点施策として盛り込んだが、この中では自治体による実態調査を支援する事業も計上していることから、鹿児島県は調査に乗り出す方針だ。

国、新たに小学生や大学生も対象に

 厚労省が8月末に発表した来年度予算の概算要求額は、前年度比2・4%(8070億円)増の33兆9450億円。4年連続過去最大で、新型コロナウイルス対策が柱だが、重点施策にヤングケアラーへの支援も掲げている。

 こうした国の姿勢を受けて鹿児島県の取り組みは、開会中の9月定例県議会代表質問で取り上げられた。答弁に立った、くらし保健福祉部の吉見昭文子育て・高齢者支援総括監は「国においては厚生労働省と文部科学省が連携し、ヤングケアラーの支援につなげるための方策について検討を進めるためプロジェクトチームを立ち上げ、5月に提言をとりまめとめた。この提言では今後取り組むべく施策の中で早期発見・把握に関連して全国規模の実態調査を実施したが、『それぞれの地方自治体において実態調査が望まれる』とされている」と説明。厚労省では、この提言に基づき、「福祉・介護・医療・教育など関係部門の連携を密にして分野横断的にヤングケアラーの取り組みを推進していく」として、都道府県や市町村にも協力を要請する事務連絡を発している。

 吉見総括監は「厚生労働省では昨年度実施した中学生、高校生に加えて今年度新たに小学生や大学生を対象に調査を予定しており、引き続き調査検討を進めていると聞いている」と述べるとともに、県の取り組みを説明。それによると、厚労省の来年度予算概算要求にヤングケアラーの支援を強化するため自治体による実態調査を支援する事業が盛り込まれていることから、今後、具体的な調査方法や補助経費など国の検討状況のほか、調査内容に応じた市町村との役割分担も踏まえ実態調査を採用する考え。

 厚労省の初の全国調査は昨年12月~今年2月、中2と高2を対象に実施。約1万3700人が回答し、中2の6%、高2の4%が該当すると発表した。九州・沖縄では福岡県が6月、全60市町村にヤングケアラーの把握人数などを尋ねた初の調査結果を公表。把握していたのは4割の24自治体にとどまり、昨年4月現在で132人。小学生61人、中学生46人、高校生16人、所属なし(15~17歳)6人、未就学児3人だった。ケア対象はきょうだいが82・6%と最多で、母、父と続いた。内容は「食事の世話」「トイレや入浴の介助」などで、「学校などにあまり行けていない」という回答も36・4%に上った。

 今年5月に報告書を取りまとめた厚労省と文科省のプロジェクトチームは、必要な支援につなげるため、相談窓口を明確にする必要性を指摘している。

 メモ

 ヤングケアラー 法律上の定義はないが、本来大人が担うことが想定される家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子ども。障がいや病気のある家族の世話や見守りをしたり、代わりに買い物や洗濯などの家事をしたりするケースを指す。