鹿大島嶼研島めぐり講演会

クリイロナマコに寄生するハナゴウナ類を紹介する上野准教授

 

 

「かごしま深海魚研究会」を紹介する大富教授

 

 

「深海魚のメッカに」
与論の状況も紹介 未利用者種も流通、水産業活性化

 

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは25日、第14回奄美群島島めぐり講演会をオンラインで行った。今回のテーマは理学部上野大輔准教授による「ちょっと怖いが実は面白い寄生虫の話:南の島に暮らす知られざる寄生虫を追う」と、水産学部大富潤教授による「南北600㌔の海の幸―約1200種の魚を食べた教授からの報告」の2本で、41人が参加。大富教授から「鹿児島を深海魚のメッカに」という提案があり、協力を呼び掛けた。

 同大学は、奄美群島の生物の多様性などの研究成果を、群島の住民に紹介する講演会を続けて3年目になる。今年度は会場とオンライン二つの方法で行い、今回は与論島でも開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、オンラインのみでの開催となった。

 海や川に暮らすさまざまな寄生生物が専門の上野准教授は、同大理学部で与論実習を30年以上実施していることを紹介。野外実習の舞台として与論は最適で、観光資源としても重要だとした。そして、「生物が多い(多様な)場所は寄生虫も多い」と説明。1種の魚には平均4種の寄生虫がいるという試算もあり、宿主よりも寄生虫のほうが実在数は多く、生物の多様性を理解するうえで、寄生虫も調べる必要があるとした。与論の海にいる寄生虫として、クリイロナマコに寄生するハナゴウナ類、オキナガレガニに寄生するフクロムシ、ウミウシの体表に寄生するカイアシ類など、さまざまな水族寄生虫を写真とともに紹介。オオイワガニに寄生するカニヤドリエビヤドリムシは国内では与論島と沖縄島のみ知られ、イボショウジンガニにはユンヌカニヤドリムシという新種が。「新種がどんどん見つかっている状況。子どもたちの教育材料にもよいので、ぜひ興味を持ってほしい」と話した。

 大富教授は、世界レベルでは魚介類の消費量は増加しているのに、日本のみ減少していることを指摘。「スーパーなどでも輸入魚が多いが、ぜひ地魚を食べてほしい。地魚を食べることで『私たちの海を大切にしなければ』という気持ちが強くなり、それが海を守る力になる」と訴え、スジアラ、ハマダイなど奄美・沖縄の地魚を紹介。奄美群島には地域特異性のある水産資源がたくさんあるとした。

 静岡県沼津市は深海魚のメッカとしてにぎわっているが、実は奄美群島も深海魚の宝庫であることを指摘し、ハマダイ、アオダイ、メダイ、ヒメダイなどを紹介。「与論島はさらにミノエビやウチワフグなどがとてもおいしい。未利用・低利用のものをどんどん売り出したい」と訴えた。

 大富教授は「漁業者の数を減らさない」ことを目標にしており、次世代がモチベーション高くなるよう、儲かる産業にしたいと考えている。そのために、「鹿児島を深海魚のメッカとして売り出す」ことを提案、2020年8月に「かごしま深海魚研究会」を立ち上げ、水産仲卸会社、自治体とともに、鹿児島を西の深海魚王国にしようと活動している。すでに利用されている魚種に加えて未利用種を流通させ、水産業の活性化をめざす。大富教授は「ぜひ県内の多くの飲食店に『かごしま深海魚研究所』になって、消費者に深海魚を提供してほしい」と呼び掛けている。問い合わせはohtomi@fish.kagoshima-u.ac.jp大富教授まで。