築90年超の旧家古民家活用

築90年を超える古民家「前里屋敷」を改修して集落活性化拠点へ=27日、伊仙町阿権

阿権名物の石垣、ガジュマル巨木エリアに新たな拠点が

伊仙町、阿権集落活性化へ
ふれあいの場も提供

【徳之島】伊仙町は、同町阿権(あごん)集落にある築90年以上の遊休古民家を活用した集落活性化推進事業「前里屋敷改修工事」を進めている。同町初の試みで町西部地区に分散した環境学習の機能を同集落に集約。健康教育や住民によるカフェ機能、農産物を持ち寄った「朝市」などふれあいの場も提供して、集落の活性化を目指すという。

 阿権集落は、同町北西部に河川渓谷に挟まれて位置。例外なく人口減少・少子高齢化など対策が大きな課題で、高齢化率39・13%、小学校児童数は22人(全て複式学級)。世界自然遺産トレイルの認定コースもあり、観光客もじょじょに増えているが休憩施設や食事処がないなど 課題(町当局)も。

 「前里屋敷」とは、同集落名物の石垣群と巨大ガジュマル(通称・3百年ガジュマル)に隣接。1896(明治29)年12月から伊仙村ほか16カ村戸長を務めた平福鼎(ふくてい)氏、48(昭和23)年7月伊仙村長に就任した平福次郎氏ら一族代々の屋敷のこと。

 同旧家の屋敷は、木造平屋の延べ床面積約197平方㍍。親戚の平陽子さんは「改築されたのが昭和6年ごろと聞いている」。現家屋の創建年代は不明で、重厚な外国産材も含めた骨格は「幕末・明治期にさかのぼる可能性も」。本来の赤瓦のみは経年劣化や台風損傷、入手困難により近年、雨漏り対策でコロニアルに葺(ふ)き替えられたという。

 遊休家屋となって朽ちかけた事や、町の利用希望もあり、福次郎氏の長女・広瀬玲子さん(出水市在住)が敷地(約1250平方㍍)も含め町に寄贈していた。

 同集落活性化事業の総額は約4410万円(国土交通省補助2076万3千円、ほか過疎債を活用)。主要部を温存する改修工事は7月に着工して完成目標は12月初旬。「朽ちた細かい部材の補修に加え、ゆがみの修正など難作業」(関係者)が続く。

 町当局(未来創生課)は、築90年超の古民家の改修・再編してワンストップ機能を向上。その上で、①地域おこし協力隊を活用した地域サロン(ポールウオーキングなど)②環境教育の場(地域の子どもたちによる集落ガイド、島内の生物調査の拠点化)③集落住民が主体となったコミュニティカフェ併設④元馬舎(別棟・改修中)の「朝市場」への活用方針を提示。利用方法は集落側と協議、来年早々の供用開始を目指すという。