「三京分校の灯」守る

全児童が山海留学生の「三京分校大運動会」(円内はファンファーレ演奏の保護者・太田さん)=29日、天城町

天城町・全児童が県外「山海留学生」
大運動会、過疎集落に元気届ける

【徳之島】徳之島のほぼ中央部、世界自然遺産エリアにも連なる緑の山間に抱かれた天城町立西阿木名小三京分校(田川俊一校長、児童数4人)―。その大きな特徴は、在学児童全員が県外からやってきた山海留学生。29日の「三京分校大運動会」。ひと際大きな歓声を過疎集落にこだまさせ、元気を届けた。

同町三京集落(39世帯・70人)は典型的な少子高齢化地域の一つ。同分校は創立77年目だが過疎化の波とも相まって児童数が年々減少。4年前から地元の新入学児ゼロが継続。前年度はついに在校児童ゼロ予測となり、分校存続の危機にさえ瀕した。それを回避できたのは同町教育委員会が十数年前から取り組む山海留学(それ以前は里親留学)制度だ。

同分校存続に貢献している家族は昨年4月、三重県から家族4人で転入、Iターン就農した太田照久さん(46)=同町当部=と、今年4月埼玉県からやってきた会社員深澤広之さん(41)の妻子5人=三京=の2家族だ。分校には太田さんの長女と深澤さんの子3人が通う。

大運動会は、例年だと校区民や本校(西阿木名小)の援軍も交え約百人規模で盛り上がる。今年は新型コロナウイルス対策で両保護者と集落区長のみを招待。開会式時点の参加者は約15人。だが、京都大学サークル時代からジャズ・トランペッターでならした太田さんの町制60周年にちなんだ「天城町民歌」のファンファーレ演奏で開会した。

4人の全児童が主役の表現「ワイド節」を皮切りに短縮プログラム(8種目)がスタート。短距離走には西阿木名小の4人も応援参加した。田川校長ら職員や保護者もフル出場で「大運動会」に盛り上げた。

4月に転入した深澤さん夫妻は「海や山の自然が豊かな所で子どもを育てたい。海もきれいで空気もおいしい。〝ワンチーム・ペース〟も楽しい。まるで絵の中で暮らしているようで親子ともに気に入り、ずっと暮らしたい」とニッコリ。

三京集落の豊村祐一区長(65)も「新型コロナで縮小され校区民が参加できないのは正直いって寂しい。しかし子どもたちが元気で登校する姿や、大きな笑い声は集落全体を元気にしてくれる。分校存続の協力にも感謝したい」と目を細めていた。