鹿大島嶼研勉強会

現状把握の必要性を訴える浅利准教授

種に対応した対策を ロードキルの実態知る

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室は、29日に第32回勉強会「奄美分室で語りましょう」をオンラインで開いた。テーマは「奄美大島3地域で車にひかれる両生類」で、話題提供者は帯広畜産大学環境農学研究部門の浅利裕伸准教授。18人が参加。浅利さんは「野生動物のロードキル(交通事故死)対策は、種に対応した対策が必要」と語った。

 世界自然遺産に登録された奄美大島は、野生動物のロードキルが大きな問題であり、今後の保全対策が不可欠。ユネスコの世界遺産委員会からも対策強化の要請を受けている。

 浅利さんは「野生動物の生態の解明および人とのあつれき解消のための対策」が研究テーマ。今回は奄美大島の3地域で両生類(カエルやイモリなど)のロードキルについて調査した結果を報告した。

 ロードキル対策を講じるためには現状を把握する必要があり、①どの種がロードキルにあっているのか②ロードキルが多発する時期③地域によって傾向は違うのか―を調査。2020年10月から月2回1年間、3地域(笠利、龍郷、大和村)で約10㌔の道を時速10~20㌔で走行し、新鮮なロードキル個体を探索して種と位置を記録した。

 20年10月から21年8月までに発見されたのは、イモリの仲間(有尾目)2種128個体、カエルの仲間(無尾目)8種50個体。シリケンイモリ127個体と最も多く、リュウキュウカジカガエル17個体、アマミハナサキガエル14個体と続いた。

 ロードキルが多発する時期は、シリケンイモリが11月~1月、リュウキュウカジカガエルが5月に集中、アマミハナサキガエルは季節に特異性がなかった。種によって傾向が異なることがわかる。

 地域による違いもあった。笠利が最も発生種数が多く、シリケンイモリが多かった。龍郷は種は少ないがシリケンイモリが多く、大和村は種は少なく、アマミハナサキガエルが多かった。

 発生環境として、両側に樹木や草地があるところや近くに水場があるところは多いことが想定されるが、広い道路や住宅地でもロードキルが発生していることがわかった。

 これらの調査結果より、①多くのイモリやカエルがロードキルにあっている②種によってロードキル発生時期が異なる③地域によってロードキル発生種・数が異なる―ことがわかり、浅利さんは「生息種の調査や生息種に対応した保全対策が必要」と結論づけた。また、ロードキルは自動車の速度、交通量、個体の密度に関係する、という説明もあった。

 参加者からは調査結果や保全対策の事例などについて質問が寄せられた。