【準決勝・樟南―大島】8回裏大島一死三塁、4番・西田の犠飛で三走・武田が生還、2―2の同点に追いつく=平和リース
【鹿児島】第149回九州地区高校野球大会鹿児島県予選第13日は11日、鹿児島市の平和リース球場で準決勝2試合があった。
大島が樟南と対戦。2―2のまま延長戦でも十二回までに決着がつかず、十三回からタイブレーク方式へ。大島が逆転サヨナラ勝ちで3時間8分の死闘を制し、初の決勝進出と15年秋以来6年ぶりと3回目となる九州大会(11月6日―・鹿児島)出場を決めた。
第14日は12日、同球場で3位決定戦がある。
=平和リース=
◇準決勝第2試合
樟南
1000001000001 3
0000000200002 4
大島
(13回からタイブレーク)
【樟】永吉、尾形、濵田―森
【大】大野―西田
▽二塁打 町北(樟)
(樟)4673134312613
打安点振球犠盗併失残
(大)447436210214
【評】2点差を追いかける大島は八回裏、一死二塁として3番・武田の中前適時打で1点を返す。返球が乱れる間に武田は三塁へ。4番・西田が犠飛を放って同点に追いついた。エース大野は尻上がりに調子を上げ、八回以降追加点を許さず。勝負は延長戦へ。九回以降は大島が押し気味に試合を進めるも決勝点が奪えず。十二回でも決着がつかず、十三回からは無死一二塁から始まるタイブレーク方式へ。表に1点を失ったが、その裏、無死一三塁として5番・中は二ゴロだったが、併殺を狙った相手のミスとなって同点。更に一死満塁と好機を広げ、8番・青木が死球。押出しで3時間8分の死闘に決着をつけた。
3時間8分。「気の遠くなるような」(塗木哲哉監督)長丁場の死闘を制し、大島は初の決勝進出を勝ち取った。塗木監督は「最後は野球の神様がこちらを向いてくれた」と万感の想いを込めた。
夏のような蒸し暑さの中、両チームとも攻守にミスが相次ぎ、我慢比べの展開が十三回まで続いた。「神様」を振り向かせたのは、局面で見せた「選手の強気な判断」だったと塗木監督は力強く語る。
十三回裏、5番・中は初球の送りバントを空振り。第2リードを大きくとっていた二走・武田涼雅主将は、捕手の二塁送球の間に果敢に三塁を陥れた。空振りは想定外のミスだが、武田主将は「相手の捕手は九州トップクラスの強肩だから必ず二塁に投げてくる」と判断し、帰塁せず一か八かの三塁進塁にかけた。一死一塁と好機がしぼむ場面が無死一三塁に広がり、相手のエラーの間に武田主将が同点のホームを踏んだ。一死一二塁の場面で二走・西田も強気の三盗を決め、プレッシャーをかける。最後は死球押出しで劇的な幕切れとなった。
13年に春秋連続で4強入りし、翌14年には21世紀枠で甲子園出場も果たした。以来、毎年のように8強、4強までは勝ち上がるものの、決勝進出を果たせずにいた。この日も序盤の劣勢、終盤の好機生かせず、苦しい戦いだったが「攻守、ベンチが一体となった絶対に負けたくない気持ち」(塗木監督)が最後まで途切れなかった。
「先輩たちから託されたことを果たせてうれしい」と武田主将。「決勝も勝って、新しい歴史を切り開いていきたい」と意欲を燃やしていた。 (政純一郎)
183球の力投が報われた。大島初の決勝進出へと導く原動力となった。
立ち上がり、ミスが重なって先に失点したが「樟南は強豪私学。速い打球がくるからエラーが出るのは想定済みだった」。エラーが出るのは仕方がない。その後をしっかり抑えることが試合前からチームの共通認識でできていた。一、七、十三回で失点したが、いずれも最少失点でしのぎ、「次の1点」を許さなかった。
八回二死から九回まで圧巻の4者連続三振。終盤は徹底した変化球勝負で相手の打ち気をそらし、ここぞという場面では130㌔台後半の直球の威力が落ちず、相手に得点の気配を与えなかった。
同点に追いついて以降、押し気味に試合を進めながら、なかなか決勝点が奪えない。我慢のマウンドが続いたが「1対9のつもりで投げ抜く」姿勢を貫いた。
1対1で勝負していると思うと気負いや力みが出る。ましてや相手はこの夏の甲子園を経験した強豪・樟南。1人で戦うより守ってくれる8人の野手と9人で戦えばきっと負けない。周りを信じ、安陵のグラウンドで練習してきたことを意識して最後まで投げ抜いた。
苦しみながらもチームは「決勝進出」という「新しい歴史」を切り開いた。ここで満足するつもりは全くない。決勝の相手は強力打線の鹿児島城西。「とても楽しみ」と真っ向勝負を心待ちに、更なる歴史の歩みを進めていく意欲を燃やしていた。(政純一郎)