鹿児島大の後藤教授 天城町でセミナー

「放牧ブランド化」を提言した後藤教授(上)と、放牧用に草地化されつつあるコーラル採取跡地=14日、天城町

「放牧・徳之島ブランド牛」も提言

 【徳之島】鹿児島大学産学・地域共創センター主催の「徳之島でのコーラル採取跡地を活用した放牧牛飼養について」のセミナーが14日、天城町役場であった。同大農学部農業生産科学科畜産科学教授の後藤貴文氏が「国土の活用、先端科学とDXによる牧草和牛で畜産業を革新する」で講演。環境保全にも貢献する放牧肥育牛による楽しい徳之島ブランドづくりを提言した。

 地域課題の解決に同大の知的資源を活用、人材育成や地域活性化に連携・協力する包括連携協定の一環。今回のテーマは、天城町西阿木名地内(㈱徳之島コーラル敷地内)を活用した放牧牛飼養の相談を受けたのがきっかけ。肉用牛繁殖農家9人や県・町農政担当者ら含め約20人が聴講した。

 後藤教授は、草(微生物)と水資源だけで良質な換金率の高い黒毛和牛が肥育できる優位性。科学と国土(森林面積66・4%うち約30%使用)をフル活用した牛肉生産システムの大構造改革。食肉の栄養生理機能。世界で生産される穀物飼料価格の高騰。世界の爆発的人口増加と食料問題。車産業の環境保全型自動車開発と同様の「ものづくり」が求められている畜産業界の現状―などについて解説した。

 管理不足で放置した放牧場合のデメリットには、野生化による生育不足(約3百~4百㌔程度)があるが、子牛時点でのTMR(粗飼料・濃厚飼料混合)など高栄養の補助飼料で太りやすい体質に改善できること。さらに放牧することでメタンガスを大地に吸収させる地球の環境保全。 

 また、山すそ約60㌶を活用した親子周年放牧の給餌用スタンチョン(係留具)をAI(人工知能)とスマートフォンだけで遠隔操作し、1日の実働約2時間に省力化している先進例なども紹介。

 その上で「徳之島ブランドの哲学があった方が楽しい。時代の変化にも対応できる放牧(肥育牛)をブランド化すれば、楽しい地域おこしにもつながる」などと提言した。

 聴講者の1人で、徳之島コーラル社員で自ら繁殖牛も手掛けている芝田賢司さん(35)=同町瀬滝=は「使用されていない山や原野の有効活用。高栄養飼料による子牛段階からの体作りの大切さも知った。AIとスマホ操作だけで管理できる畜産経営も夢です」と話した。