国立公園「風致景観」損なう


軽石漂着で風致景観も一変。上から徳之島町「金見崎」、「畦」、「花徳・里久浜」の3海岸=28日

徳之島・軽石漂着、復旧対策に苦慮

【徳之島】小笠原諸島の海底火山由来の軽石が大量に漂着している問題では、エンジン故障を懸念して漁船が出漁できない実害が拡大。徳之島町内でも漁港泊地に流入した軽石の撤去対策を急いでいる。その一方では、奄美群島国立公園指定エリアを含む海岸線の風致景観も損なわれ、関係機関は、自然の威力を前に対応に苦慮している。

徳之島町北東部の「畦(あぜ)海岸」(畦プリンスビーチ海浜公園)と、東北端の「金見崎(かなみざき)海岸」はいずれも奄美群島国立公園(第三種特別地域)。バリアリーフ(堡礁)に囲まれたエメラルドグリーンに輝くサンゴ礁の海には多種多様な生物が生息。美しいグラデーションを描いて白い砂浜へと続く。金見崎海岸は、天然記念物オカヤドカリの大群の一斉〝産卵〟ポイントでもおなじみ。

奄美・沖縄の世界自然遺産(今年7月登録)地域の一つでもある徳之島の海岸部を代表する美しい両海岸のはずだが、そのまぶしい白い砂浜は、まるでセメントのような灰色の帯が伸び、目を疑う光景に一変していた。国立公園指定外ではあるが、同じ北東部にある同町花徳「里久浜(りくばま)」海水浴場の自慢の砂浜も灰色に染まっていた。

ちなみに、国立公園計画の目的には「風致景観の維持」も含まれる。環境省・沖縄奄美自然環境事務所(那覇市)の浪花伸和国立公園企画官は、軽石問題について「市町村から情報を収集。(海の行楽)シーズンオフは幸い。ゴミみたいで見た目は悪いが、自然現象でもあり、感覚的な受け止めの相違もあると思う」。復旧対策には「長期的な視点も必要。重機を入れて取り除くとなると、砂も一緒に持っていくことになる」と頭を抱えている。

県徳之島事務所は28日までに県管理漁港内の撤去作業を委託。地元徳之島町は、日ごろ継続の海岸漂着物地域対策推進事業(環境省90%補助、町シルバー人材センター委託)の中で、町管理漁港についても対処。「漁業への支障の改善に努めたい」(新田良二・住民生活課長)などとしている。