オンラインを通して全国から100人以上が参加した県立大島病院救命救急センター講演会
「蘇生しないで病院へ運んでください」―。県立大島病院救命救急センター主催の2021年度「第4回講演会」が29日、奄美市名瀬の同センターであった。テーマは「救急医療と在宅医療・奄美での新しい連携のカタチ」。救急医療や消防関係者らが参加者し、講演や事例報告を通して、奄美での「DNAR」促進に向けた連携の在り方を探った。
DNARは「心肺蘇生措置を試みない」の意味。終末期や人生の最終段階にある人が治療や緊急時などの対応を事前に決めておくもので、推進の背景には医師や病床数の減少、高齢化が一層進む見込みから限られた医療資源を確保したいとの考えなどもあり、併せて患者本人と家族、医療側であらかじめ将来の医療方針と意思決定を推進する「ACP」(事前の医療・ケア計画立案)の普及を奄美で促進しようと企画した。
この日は、産業医科大学救急医学講座教授などを務める真弓俊彦さんが「在宅医療と救急の連携が今後の医療の鍵を握る」と題し講演。群島内を含む全国の関係者100人超がオンラインを通して耳を傾け、意見を交わした。
真弓さんは、増加する高齢者の不要不急の救急搬送、高齢者福祉施設での格差を示すデータやアンケートを例に、▽終活の不浸透▽用語の混乱▽ACPの普及不足―などの課題を提示。「心拍再開後も延命措置を望む声は少なく(看取りを望む患者は)病院で亡くなることは必ずしも最善ではない。患者が望む最後が迎えられていない。まずは(関係者の)理解と浸透が急務だ」などと訴えた。
真弓さんは、医療介護現場などで使われるアプリやサイトの活用事例などを紹介し、救急を覚知の窓口とする連携方法などでアドバイス。「大事なのは地域で検討すること。課題は山積みだが、救急と在宅がタッグを組んで頑張ってほしい」と呼び掛けた。
この他、大島地区消防組合消防本部の鶴岡慎太郎さんが「心肺蘇生を望まない傷病者への対応、奄美での取り組み」、同センターの山端裕貴さんからは「ドクターヘリと看取りの事案」と題する事例報告を行った。