白神山地を歩く~中~国内初・世界自然遺産登録地

白神山地の麓・十二湖エリアのブナ林(青森県深浦町)

十二湖屈指の景勝地「青池」(青森県深浦町)

木々の間隔広いブナ林

 翌朝は午前5時半ごろに目が覚めた。朝焼けに彩られる港を少し散歩し、道の駅を後にした。白神山地の麓に広がる十二湖と呼ばれる地域を目指す。十二湖は世界自然遺産の域外だが、白神山地特有のブナ林が堪能できる。奄美大島でいうところの「奄美自然観察の森」(龍郷町)に近い立ち位置だろうか。

 十二湖とは名ばかりで、河川がせき止められてできた大小33もの湖沼が点在している。成因は詳しくわかっていないとのことだが、近くにある「崩山」が地震により崩壊したことに起因するという説が有力らしい。

 早朝の湖は風もなく穏やかで、それぞれが青空や森を鏡面のように映し出す。十二湖で最も有名な「青池」はインクを垂らしたかのようなコバルトブルーで、息をのむような景観が楽しめた。

 青池から遊歩道を歩くと、ブナ林を楽しめる区域が広がる。暗門渓流とは違い、せせらぎも聞こえないため、静寂がより印象的だ。時折、キツツキが木をたたくドラミング音が耳に入る。これも奄美の森で聞きなれた音ではあるが、音の主はおそらく国内では北海道・東北に分布する「クマゲラ」だろう。目を凝らし姿は視認したものの、カメラを構える間もなく飛び立ってしまった。

 遊歩道の外側に広がるブナ林をじっくりと観察してみると、木々の間隔は広く、低層にはササやシダ植物が広がる。奄美や徳之島の森より明るい気がしたが、木々の密度の問題だったようだ。

 この日の森の散策は十二湖周辺のみで切り上げ、日本海沿岸を北上し、青森市を目指す。進行方向左手側にずっと海が見える風景が奄美と少し重なった。道中、▽日本海の絶景を楽しめる「不老ふ死温泉」▽広大な磯場が広がる「千畳敷」▽日本一長い三連太鼓橋「鶴の舞橋」―などに立ち寄った。寄り道に時間を割きすぎたのか青森市内に到着したのは日も陰る午後5時ごろ。この日は青森市中心市街地からほど近い浅虫温泉に宿をとり身体を休めた。