名付け親、与論町の町聡志さん

クイーンコーラルクロスの初就航を喜ぶ、名付け親の町聡志さん=21日、与論町=

「自分の子どものよう」「クイーンコーラルクロス」初就航

【沖永良部】新造船「クイーンコーラルクロス」の就航を誰よりも喜んでいる人がいる。与論町の町聡志さん(35)。船の名付け親だ。

マリックスライン(鹿児島市)が実施した船名公募で、435件の中から命名理由なども含めて審査の結果、最優秀賞に選ばれた。

「新しい船のために何かしらの形で関わりたいと思って応募したが、採用の連絡を受けて驚いた」と町さん。

23年間の長旅を終えて引退する「クイーンコーラル8」への感謝の気持ちや、先輩でありこれから相棒として航路を支える「クイーンコーラルプラス」とタッグを組んで可能性を広げてほしいとの願いを「クロス」に込めた。

「自分の思いを書き出したら、応募用紙の記入欄だけでは収まらなくて、もう一枚に書き足して送った」と笑顔を見せた。

幼い頃から船が大好きで、部活の大会や修学旅行など日常的に船を利用してきた。大学入試センター試験では、会場のある沖縄に着くまで船内レストランで勉強に励んだ思い出もある。「島立ちや恩師との出会いと別れ、人生の端々に船がある」。

町さんは身長187センチ、体重118キロの巨漢。就航前の試験航海時に新造船の姿を初めて見て「自分に似て大きいなあ」と、我が子が誕生したかのように感動した。

6月に船名が決まり、その2カ月後には次女が生まれた。「クロスも合わせて3姉妹になった」と喜ぶ。

初就航を迎えた翌日の21日、与論島に到着する船を待っていた町さんは「期待と不安が入り交じった感じ。一人でも多くの人を目的地に送り届けてほしい。名付け親としてそれに勝るものはない」と話した。

与論島には、本名のほかにヤーナー(家名)と呼ばれる別の名前を付ける風習がある。「クロス」には、ナビゲーションにちなみ「ナビ」というヤーナーを付けたという。