再捕獲例が増加

石川県白山でマーキングされたものが龍郷町の長雲で再捕獲された

吸蜜植物ヤマヒヨドリバナが草刈りされず保全されたことで、多くのアサギマダラが飛来するようになった

マーキング参加者増 全国的な関心高まり
アサギマダラ秋の渡り 龍郷町では「白山マーク」確認

 日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラの今年の秋の渡り(南下)では、マーキング(羽への標識)されたものが再び捕獲される例が増えており、喜界島では100例以上も確認されている。個体数の増加のほか、吸蜜植物の植栽、マーキング者の増加など全国的な関心の高まり・広がりが指摘されている。

 アサギマダラ研究家として知られ、『謎の蝶 アサギマダラはなぜ海を渡るのか?』などの著書がある栗田昌裕さん=群馬パース大学学長、医学博士=によると、秋の渡りが始まったのは東北地方の場合、例年通り8月下旬。9月には群馬県や長野県、10月には愛知県、西日本各地で飛来が確認されるようになった。

 今秋の渡りの特徴として栗田さんが指摘するのが、捕獲しマーキング後に放したものが、もう一度捕まる再捕獲の増加。「南下ルートのポイントごとに、コンスタントに再捕獲情報がおびただしい数で寄せられており、1日20件も届くこともある」。羽に標識を書いて飛ばし、遠隔地で再捕獲するマーキング調査の愛好者は全国に存在するが、こうした愛好者が増えているという。本州では吸蜜植物の一つフジバカマが開花していると確実に飛来することから、個人宅や自治体所有の公園などにフジバカマを植える取り組みが広がっている。「植栽地に多くの人が訪れ、アサギマダラの飛来を観賞したり、マーキング調査に参加したりしている。屋外での活動として参加者が年々著しく増加していることから、『文化』とも呼べる現象ではないか」と栗田さん。

 喜界島での再捕獲は10月14日に最初の報告があり、下旬にかけて増加。奄美大島でも10月下旬から11月にかけて再捕獲の報告が増えるようになった。今月21日には、龍郷町の長雲周辺の峠で白山マークのアサギマダラが1匹再捕獲された。石川県白山市では自然学校インストラクター養成講座の一環で、「アサギマダラファンクラブ白山」が協力してマーキング教室を開催。同教室受講者がマーキングしたうちの1匹が再捕獲されたもの。今シーズン、白山マークが奄美大島で再捕獲されたのは9匹目になるという。

 マークは「白山 9/25 MTK20」。標識者は、自然インストラクター研修生の北方明子さん(46)と判明。北方さんは奄美新聞の取材に対し談話を寄せた。「研修で旅するアサギマダラのことを知りました。小さく薄い羽をはためかせて何百㌔も移動するチョウに底知れない可能性を感じました」「マーキングに使った標識名は、母の名前からとりました。母は今、大病を患い入院中です。母が元通りの生活に戻れるようにと願いをのせて空に放ったアサギマダラが、長く大変な旅をして美しいまち龍郷町までたどり着いたと聞き、きっと母も長い治療を乗り越え家に戻ってきてくれると強く信じることが出来ました」「元気になったら、着物好きの母に、龍郷柄の大島紬を着せてあげたいです」。

 石川県の白山から奄美大島の龍郷町に渡ってきたアサギマダラによって新たな縁が結ばれた。