大規模化時代に「小農」のススメ

「今、なぜ小農なのか?」をテーマに講演した萬田さん(右)

 

 

瀬戸内町節子で萬田さん講演
せとうちんちゅネットワーク

 

 鹿児島大学名誉教授でアイガモ農法の研究者・萬田正治さんの講演会が27日、瀬戸内町節子のロビンソンファームであった。テーマは「今、なぜ小農なのか?」。萬田さんは農業の大規模化や法人化が進む中、「このままでは共同社会である農村が消えてしまう」として、あえて小規模で取り組む「小農」のススメを説いた。

 せとうちんちゅネットワーク(高野良裕代表)が主催。独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金を活用し、地元農家や町民ら約30人が耳を傾けた。

 「いよいよ危ない。農村・農家は消えますよ」と切り出した萬田さんは、農家の高齢化、多用される農薬・除草剤の影響、循環を生み出す昆虫や野鳥の減少など、今ある農村の現状を紹介し「集落は限界から消滅へと向かっている」と警鐘を鳴らした。農村低迷の要因については「1964年の農業基本法制定以降、国の政策は生活農業をなおざりにし、産業としての農業に特化し推進してきた」と説明。「大規模な企業的農業が進出しても、採算が取れなければ出ていく。今の政策では地方に恩恵はなく村も維持できない」と危機感を訴えた。

 萬田さんは「重要なのは産業としての農業と、暮らしとしての農業を複眼的に捉えること」と述べ、農的暮らし、菜園家族、定年帰農、半農半Xなどをキーワドに、打開策としての小農を推奨。「これからの社会は、第一次や二次など様々な産業従事者が食や農に関わる時代を迎えるのではないか」とし、「なぜなら食こそ命の源で、小農こそ国民の食糧安全保障だから。奇をてらわず頑張ってほしい」と呼び掛けた。