県議会代表質問

漂着した軽石の除去作業(奄美市名瀬小湊漁港で)

「工事進める必要ある」 嘉徳海岸護岸整備で知事
軽石処理 費用で国財政措置

 12月定例県議会は2日、代表質問があり、自民党の長田康秀議員=鹿児島市・鹿児島郡区=、県民連合の柳誠子議員=鹿児島市・鹿児島郡区=が登壇。奄美群島で深刻な被害となっている軽石漂着について、回収など処理費用の財政措置は国庫負担率が99~98%に及び、ほとんど国の予算で対応できることが説明された。整備計画を見直すよう求めた嘉徳海岸(瀬戸内町)護岸工事の質問に対し、塩田康一知事は現地視察の感想を踏まえて「工事をしっかりと進める必要がある」と述べ、県整備方針通りの工事推進を示した。

 軽石問題については橋口秀仁危機管理防災局長が答弁。それによると県内では11月24日までに奄美群島など15市町村の港湾・漁港・海岸の計99カ所で軽石の漂着を確認。自然回復や漁業に支障がない等を除く39カ所で回収が必要で、19カ所では災害復旧事業および海岸漂着物等地域対策推進事業活用やボランティアなどの協力により回収が進められている。残り20カ所は国の補正予算成立後、対応される予定。

 処理費用の財政措置について橋口局長は「港湾、漁港の箇所ごとの処理費用は、県管理施設で120万円以上、市町村管理施設で60万円以上となる場合、公共土木施設災害復旧事業の活用が可能で地方交付税措置を含めて国庫負担率99%、海岸や災害復旧事業が適用されない港湾、漁港については環境省の海岸漂着物等地域対策推進事業の活用が可能で国庫補助率98%」と説明。軽石漂着でエンジン損傷、減収等が生じた漁業者には漁船保険や漁業共済での対策が可能、予約のキャンセルで影響を受けたマリンレジャー事業者等には県中小企業融資制度の利用が可能で、関係機関等を通じてこうした制度の周知を図っているとした。

 自然地形を生かした海岸政策で嘉徳海岸護岸工事の見直しは、県民連合の柳議員が取り上げた。兒島優一土木部長は、▽砂浜回復=砂浜の砂は戻っているが、堤防の役割を果たす砂丘に代わるものではない。砂丘は現在も復旧されておらず、消失した砂丘が保持していた防災能力の代わりとして護岸整備の必要がある▽護岸工事による嘉徳川への影響=河口部において河川の流れに影響を及ぼす範囲は、河口から海に向けて11度に広げた線の範囲とされており、嘉徳海岸の護岸はその範囲から十分に離れており河川の流れに影響を及ぼすものではない▽整備の進め方=整備方針に基づき工事を実施するが、県には護岸整備に関するさまざまな意見が寄せられており、あらためて専門家の意見をうかがいながら技術的な検討を行った結果、現計画通り実施することとした―と答弁。

 柳議員は再質問で、「知事とふれあい対話」で奄美大島を訪れた際、嘉徳浜を視察した知事の見解を求めるとともに、「地元の人は、浜は回復していると主張しており、今立ち止まって防災可能な海岸線の機能とはどういうものか、もう一度(計画を)見直す考えはないのか。反対する住民の意見にも耳を傾けるべき」と指摘。塩田知事は「軽石の状況等を含めて見に行き、砂が浜に上がって削られた所の高さまで積もっているのを自身の目で確かめた」と述べた一方、「波の力、台風がきた場合に防御する能力があるか不安があるのも事実。嘉徳海岸の砂浜は、まだ砂丘まで復活しておらず、時間がかかるという指摘があり、県としては地元住民の安心安全、生命財産を守る観点から工事をしっかり進める必要がある」との認識を示した。