奄美市生徒指導審議委員会

非公開で行われた生徒指導審議委員会。ハンドブックの活用状況などの報告があった(6日、奄美市役所)

各学校の活用状況チェック
ハンドブック作成後初開催 委員長に有倉鹿児島大教育学部長

2015年に奄美市の中学1年男子生徒(当時13歳)が、担任教諭の不適切な指導で自死した問題を受けつくられた「生徒指導ハンドブック」の活用状況などをチェックする「生徒指導審議委員会」の第1回会合が6日、市役所であった。学識有識者ら市教育委員会が選任した6人の委員が出席。委員長には鹿児島大学教育学部長の有倉巳幸教授(教育心理学)(56)が就いた。市内の全小中学校のハンドブックの活用状況などについて市教委が報告、ハンドブックをより活用しやすくするための課題などについて協議した。

委員会は非公開で行われ、終了後に有倉委員長が記者会見し、委員会での議論内容などについて説明した。同委員長によると、市内の各小中学校でのハンドブックの活用状況については、ほぼすべての学校が何らかの形で生徒指導に活用している一方、学校規模など各学校の状況によって活用度にばらつきが見られたという。

その要因として同委員長は「ハンドブック作成の経緯から中学生を対象とした記述内容が多く、小学校での活用が難しい面がある」などと指摘。今後、市教委などと協議しながら内容の改善などに努める方針を示した。

また、委員からは、市教委の報告が全体的な取り組み状況を数値化したデータなどに偏ったこともあり、個々の具体的な事例報告が不十分といった指摘や委員会を公開で行うよう求める意見などもあったという。同委員長は「委員会で協議した内容を広く市民に知ってもらうためにも原則公開が望ましい」との考えを示した。

ハンドブックは、市教委が設置した「再発防止対策検討委員会」が今年2月にまとめたもの。▽生徒指導態勢▽体罰・暴言▽教育相談▽教育委員会の対応の在り方―の4項目について、取り組むべき内容や課題解決に向けた手順、方法などを示している。市内の全小中学校に配布され、各学校で生徒指導態勢の構築やいじめ、体罰の防止などに活用している。

ハンドブックを巡っては、再発防止対策検討委の委員を務めた自死生徒の父親が「(自死)事案の概要と課題の記載が不十分で、生徒指導に関する理解が深まっていない」などと指摘。ハンドブックの活用など生徒指導の実効性を担保する方策として、第三者機関によるチェックできる体制づくりを求めており、同審議委員会がその役割を果たすことになっている。

委員は、有倉委員長のほか、和田知彦弁護士(奄美あすなろ法律事務所)、芝原祥三臨床心理士(鹿児島こども病院)、金城三雄・奄美市人権擁護委員、窪田尚広・市PTA連絡協議会長(朝日中PTA会長)、窪田智司・金久中学校長が務める。学期ごとに年3回、委員会を開催する予定。今年度は、新型コロナウイルスの影響により7月に予定していた審議が実施できなかったため、2回の開催を予定、次回は2月に行う。