講演を行った東京大学公共政策大学院交通・観光ユニットの三重野真代特任准教授
あまみ大島観光物産連盟が主催のカート型低速電動自動車「グリーンスローモビリティ」(以下グリスロ)を学ぶ講演会が18日、宇検村生涯学習センター「元気が出る館」であった。東京大学公共政策大学院交通・観光ユニットの三重野真代特任准教授が「小さな低速電動車が地域と公共交通を変える」と題し講演。観光、行政の関係者など約30人が聴講。グリスロの定義、事業化、観光活用事例などからその可能性を学んだ。
グリスロとは、時速20㌔未満で公道を走ることができる電動車を利用した小さな移動サービスのこと。同村では、高齢化が進む地域での地域内交通の確保、観光資源としての展開など期待出来るとして、11月1日から来年1月31日までの3カ月間、5人乗りグリスロ1台による実証運行を開始している。
三重野准教授は、2003年に国土交通省に入省。後に観光庁を経て14年には国土政策局総務課課長補佐として奄美群島振興開発特別措置法の改正も担当。観光を専門とすると同時にグリーンスローモビリティの起案者であり、その名付け親として「グリスロ」という略称を推奨している。
講演で三重野准教授は、グリスロを政策にした理由として①免許を返納する高齢者②インバウンドで増加する観光客③運転したくない人たちの増加―を挙げ、現在の公共交通事業者がこれらの公共交通ネットワークを提供することの限界を指摘。新たに「地域が提供できる公共交通」としてグリスロがその役目を果たすのではないか、と話した。
そしてこれからの時代は、高齢化社会に伴い社会問題化している高齢運転者の交通事故が増加すると同時に、高齢になるほど徒歩移動が増え、かつ移動距離は短くなることを指摘。グリスロの実用面での必要性を説明した。また、単身世帯が増え、「孤独化」が深刻化することも同時に指摘し、乗り合い乗車による「コミュニケーション装置」としての役割を果たすと話した。
三重野准教授は、約1時間に及ぶ講演会の最後に「グリスロは『ゆっくり』『しま時間』『開放的な関係性』という言葉と共に、世界自然遺産登録による持続可能な観光を目指す『奄美』という地域にとてもあっている乗り物だと思う」と話し講話を締めた。