奄美大島ウミガメ調査結果

減少傾向が続くアカウミガメの産卵(提供写真)

産卵数 過去10年で最少
イノシシ採食行動、恒常化か

奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は22日、2021年度奄美大島におけるウミガメ上陸・産卵、リュウキュウイノシシによるウミガメ卵採食状況調査結果をまとめ公表した。産卵回数は前年比59・7%と減少、過去10年間で最少となった。リュウキュウイノシシによる卵の食害は減少したものの、採食行動の恒常化の可能性が出ている。

調査は、ウミガメの産卵モニタリングなど奄美市ウミガメ保護監視員業務の一環で同研究会が実施した調査データおよび環境省、県、島内5市町村、地域団体、地域住民が実施した調査データを集計し分析したもの。調査期間は4~9月の上半期。

まとめによると、上陸回数は431回(アカウミガメ75回、アオウミガメ298回、種不明58回)、産卵回数は326回(アカウミガメ59回、アオウミガメ241回、種不明26回)。産卵回数は前年比約6割も減少したが、種別ではアカウミガメは13年の663回をピークに減少傾向がみられ、低い水準で推移。21年度は前年比53・1%の59回と減少した。

アオウミガメの産卵回数は、前年比71・9%で減少割合は28・1%となり、「減少したが、過去10年間は安定的に推移している」と分析。16年からアカウミガメの産卵回数減少により、「アオウミガメが奄美大島の産卵優占種となっている」としている。

過去10年間で最少となったアカウミガメの産卵回数の減少傾向について、「近年、漁業活動が活発な主な摂餌海域である東シナ海の餌資源の減少による産卵頻度の低下や混獲等が考えられる」とするが、現時点では明確な因果関係は認められていないという。興会長は「数年おきに産卵するウミガメ類の生息数の増減については中長期的な分析が必要であり、継続した調査が求められる」と指摘する。

リュウキュウイノシシによるウミガメ卵および幼体の採食は、21年も確認。被食産卵巣数は81巣で、前年比65・3%と減少した。被食率は20年22・7%から21年24・8%と増加。12年から10年間の平均被食率は18・7%で、「毎年一定比率の被食が継続的にみられる」と考察。被食が発生した浜数は、21年は7浜で、「浜の多くは前年も被食があり、採食行動の恒常化が示唆されている」としており、こうした浜では、その地域の産卵個体群の減少も懸念されることから、保護対策の強化を求めている。

被食が確認された浜のうち、大和村ヒエン浜では産卵が5回あり、うち2巣は産卵後数日内に全ての卵が被食されたと報告。同研究会では、卵が残存していた産卵巣3巣上にワイヤーメッシュを設置する被食防止対策を実施。ヒエン浜の産卵巣に設置したカメラでは、リュウキュウイノシシが産卵巣を掘削している様子や砂浜を徘徊する様子が確認されたという。