無農薬、無施肥栽培でサトウキビ作り

味に関わってくると、一本一本丁寧に葉を落とす叶さん

叶農産 叶辰郎さん「年々土地がよくなる」

瀬戸内町篠川で無農薬、無施肥栽培にこだわった農業でサトウキビやタンカン作りを実践している人がいる。叶農産の叶辰郎さん(69)だ。

飲食店をやっていた49歳の時に大病を患い、生死の境から生還したのをきっかけにずっとやりたかった農業に踏み出した。そんなこだわりも、「はじめは肥料や農薬の購入資金がなかったから」と話すが、根っこには『体にいいものを作りたい』があった。

サトウキビは植えてから1年で収穫ができ、同じ苗から3~4年収穫ができる。収穫の際に落としたキビの葉や、穂先はそのまま畑に残し肥料にする。除草剤も農薬も使わない。肥料は落としたキビの葉。余分な栄養分がないぶん、害虫が付かないという。「年々土地がよくなっていく」と叶さん。サトウキビ作りを始めて20年、自然食のブームを受け、ここ10年でやっと売れるようになったと話す。食に興味のある女性が訪ねて来たり、叶さんと意見交換したいと、自然栽培に携わっている人たちが全国から訪れている。

キビの収穫時期は12月から4、5月まで。収穫し、汁をしぼり、煮詰めて黒糖を作る。そして次の収穫をする。妻の淳子さん(58)と二人三脚で、旨味が凝縮した黒砂糖を作る。ひとくちほおばると、ほろりと崩れ、キビの甘さが口いっぱいに広がる黒糖は、手にした人の口コミで北は北海道から南は沖縄まで全国から電話で注文が入る。興味を持った人たちが農業体験に訪れることもある。

この日は名瀬から助っ人が駆け付け、ともに忙しい収穫に精を出した。初めてキビの収穫を体験したという田島道代さん(58)と、飼い豚のためにキビの搾りかすをもらうお礼にと原口洋一さん(58)らが一本一本を丁寧に鎌で倒し、二股の鎌で葉を落としていく作業に汗を流した。

叶農産FAX0997(74)0151。