徳之島徳洲会病院・緩和ケア勉強会

徳之島緩和ケアプロジェクト「勉強会」でアドバスする田上恵太医師(東北大大学院医学系研究科)=14日夜、徳之島町

離島のALS在宅医療・介護にも焦点
意思決定プロセス重要

 【徳之島】徳之島徳洲会病院(藤田安彦院長)とNPO法人「ALSかごしまサポートセンター」(里中利恵理事長)共催の「筋萎縮性側索硬化症(ALS)ケア勉強会」が14日、徳之島町地域福祉センター会議室であった。出水市~与論町までの重度訪問介護や医療、保健所の関係者ら20人が参加。専門家の講義や事例発表・グループ検討を通じ、意思決定など患者に寄り添うコミュニケーションの大切さも再認識し合った。

 同徳洲会病院が2019年から取り組んでいる「徳之島緩和ケアプロジェクト」の一環。全国の緩和ケア専門医を招へいし、現地スタッフと同院内や在宅医療現場での診察、他の医療者や各訪問介護ステーションなど福祉事業者にも輪を広げ勉強会を開くなど3年目。

 筋肉を動かす神経が徐々に侵されていく厚生労働省指定の難病ALS患者たちの重度訪問介護・医療に焦点を絞った「勉強会」は鹿児島県内離島では初とも。講師は、同病院緩和ケアチームに加わっている東北大大学院医学系研究科・緩和医療学分野講師の田上恵太医師(40)が務めた。

 鹿児島市のほか郡部・離島での24時間介護も担い始めた「ALSかごしまサポートセンター(かごしま24)」の里中理事長が勉強会を進行。冒頭「患者さんと介護者は24時間つき合う。勉強とアドバイスでその孤独を勇気と自信に変えられたらいい」と呼び掛けた。

 田上医師のテーマは「病気の『軌跡』とアドバンスケアプランニング(ACP)の必要性を確認し患者・家族とのかかわりを考える」。将来の変化に備え、患者・家族・医療従事者の話し合いで価値観を明らかにして、治療・ケアの目標や選好を明確にしておくプロセスの重要性についても説いた。

 事例発表では、対象者とのコミュニケーション(胃ろう増設・人工呼吸器装着・排せつ方法移行理解)など在宅介護・医療現場の悩み、解決策もグループ討議で提言し合った。介護士からは「自分だけの悩みでないことが分かった」など感想も聞かれた。

 田上医師は、がんなど含む一般的な緩和ケアを含め、「徳之島は子宝の島。ゆりかごから墓場まで〟安心して生きられる島“。緩和ケア・終末ケアをみんなでしっかりと看てあげられる島にしたい。成功したらそのモデルを他のへき地にも」と期待。

 同徳洲会病院・在宅医療部看護師の田畑幸利(ゆり)さん(42)は「奄美群島はALS患者が人口比多い傾向にあるといわれるが、リソースやサービスが少ない。在宅介護・医療サービスを活用して家族の人生・関係も維持し、生まれ育った島で最期まで過ごして欲しい。行政も現場をもっと知って欲しい」と話していた。