課題検証で「次」に備えを

初の「大津波警報」に衝撃が走った臨海集落=16日午前4時ごろ、徳之島町母間地区

「大津波警報」対応、徳之島の場合

【徳之島】「大津波警報。海岸付近の方は高台に避難を」―。防災行政無線や携帯電話(スマートフォン)を通じた全国瞬時警報システム(Jアラート)。住民たちは“寝耳に水”のけたたましい警報に東日本大震災の大惨事を想起、着の身着のままの避難行動で寒空に震えた。要援護者対策も含め関係機関・団体の動きはどうだったのか。再検証して課題を整理し「次」に備えるべきだ。

南太平洋・トンガ沖海底火山の大規模噴火に伴い、気象庁が津波警報を発表したのは16日午前0時15分。海抜3~4メートルの臨海埋立て市街地で「高潮・津波危険地域」にもなっている徳之島町亀津地区。住民たちは「訓練ではなかった」Jアラート警報にろうばいしつつ、自家用車や徒歩で高台に急いだ。

「まずは命を守る避難を」。家族ぐるみで車で避難した住民の中には、窮屈な車中待機の経過とともにわれに返り、「持って出たのは充電切れ寸前のスマホと財布だけ。飲料水すら忘れてしまった」(40代女性)。水は自販機で購入できたが、「他人事だった非常持ち出し袋、防災グッツなどの大切さも痛感させられた」。

発表によると、徳之島町は同日午前3時26分、町全域5787世帯1万553人に避難を指示。天城町は沿岸部など1807世帯3417人を対象に避難指示を出している。

徳之島町亀津地区の町指定緊急避難場所および同避難所の一つ「県立徳之島高校」(海抜18メートル)。Jアラート警報の直後、車や徒歩で住民約100人が避難してきた。だが、体育館など室内の開放はなかった。午前1時~同3時ごろ当時の外気温は11~13度台。車中待機はまだしも、着の身着のまま徒歩で避難してきた住民らは、町当局などが防寒用の毛布を搬入する午前3時20分ごろまで寒さに震え続けた。

同避難所には同夜、過去の自治会主催の避難訓練では多かった高齢者たちの姿は少なかった。1人暮らしの高齢者や障がい者など要援護者、いわゆる“災害弱者”たちへの対応はどうだったのか。

同町公式サイトで情報提供中の「防災マップ」における緊急避難場所・避難所「徳之島高校」は、肝心のその位置を知らせる番号が「大瀬川」(県2級河川)上流域にミスマーキング。本紙が指摘後も2年近く訂正されず放置されている。住民の安全確保に関わる重要性から看過できない問題だ。

今回は外国の海底火山の噴火が原因で、幸い災害は回避された。だが、奄美大島近海想定地震だと、震源に近い喜界島で地震発生後5~10分、奄美大島や徳之島にも10~20分程度で津波が到達するとの予測もある。

今回初の「大津波警報」に遭遇しての「自助・互助・共助・公助」の動きはどうだったのか。関係機関・団体で再検証して課題を「次」に生かし備えるべきだ。