新種「アマミサクライソウ」と命名

新種と判明した「アマミサクライソウ」(右・2011年7月)と岐阜など本土で生息するサクライソウ(左・2008年8月)(髙橋弘氏提供)

 

形態、DNA解析で判明
岐阜大・髙橋教授ら論文発表

 

 
 奄美大島に自生する植物「サクライソウ」が、本土に分布する種とは異なる新種であることが分かった。岐阜大学の髙橋弘名誉教授(75)らが、昨年11月発行の日本植物分類学会の国際学術誌で論文を発表し、「アマミサクライソウ」と命名した。

 サクライソウは、葉緑体を持たず、落葉など腐植土を栄養分とする、光合成を行わない「菌従属栄養植物」。本州及び奄美大島に極めて局地的に分布し、国内では岐阜や長野、国外では台湾に分布。絶滅危惧種に指定され、岐阜県可児市の自生地は国の天然記念物に指定されているが、ほぼ絶滅状態にあるという。

 アマミサクライソウは、本土に分布する種の背丈が10~15㌢、あるいは、20㌢に及ぶのに対し、5㌢前後で低い。また、花が茎上部2分の1に密集して咲くのも特徴。そして形態上の大きな特徴として、めしべの柱頭とおしべのやく(花粉を入れる袋)が密接し「自家受粉」する点を挙げている。DNA解析でもかなりの差が見られ、新種と判明した。

 髙橋氏は、岐阜大学でサクライソウの研究を始めた頃から、図鑑を通して見ていた奄美の種の特徴、差異に気が付いていたという。2011年に来島し研究調査を実施。約10年を掛けて確認された新種の論文報告となった。

 「生物多様性」などの理由で、世界自然遺産に登録された奄美大島での発見となったことに対し髙橋氏は「生物学的に大変重要な発見であり、今回の新種が奄美の新たな植物として加わったことは、大変意味があるのでは」と話した。