オオトラツグミ調査で講演会

オオトラツグミの巣の様子を説明する水田拓さん


増加するオオトラツグミの個体確認数

幻の鳥、増加傾向 「保全に必要な調査重要」 野鳥の会

NPO法人奄美野鳥の会(鳥飼久裕会長)は22日、オンラインZoomで「『幻の鳥』オオトラツグミのこれまでとこれから」をテーマに講演会を行った。幻の鳥と言われたオオトラツグミだが、現在は個体数も増加傾向にある。その要因などを30年間の一斉調査と同鳥の生態から分析。今後の課題や保全の取り組みなどを、オンライン参加者約50人と共有した。

 オオトラツグミは奄美大島のみに生息する固有種で、国の天然記念物・絶滅危惧種に指定されている。繁殖期の夜明け前にさえずり、その特徴を利用して市民参加型の一斉調査が約30年続けられてきた。

 講演は、①「オオトラツグミさえずり一斉調査の30年」奄美野鳥の会・高橋喜男さん、鳥飼さん②「一斉調査からわかってきたオオトラツグミの生態」山階鳥類研究所・水田拓さん③「音声解析WebアプリtoriRの紹介と一斉調査への応用」トリルラボ・大坂英樹さん④「オオトラツグミから見た奄美の社会と30年間の変化」自由科学者・石田健さん―の4演目。

 鳥飼さんによると、「調査開始の1994年から10年間は40羽前後(調査地・奄美中央林道)だったが、13年ごろから100羽代で推移。現在は個体数も徐々に増え始め、分布域も拡大傾向にある」という。また奄美大島全体の個体数は2000~5000羽ほどと推測した。

 増加の原因として、マングースの減少と伐採された森林の回復などを挙げた。06年に絶滅危惧種ⅠA類からⅡ類に変更され「幻の鳥」ではなくなったオオトラツグミ。一方、問題点と今後の課題として「調査員の高齢化に伴う一斉調査のあり方の見直し」を挙げた。「一斉調査は奄美の自然に触れる市民参加型の大事なイベント。新しいスタイルを取り入れつつ、一斉調査は今後も続けなければならない」とした。

 また水田さんは生態学的な研究が必要とし、「保全にはその生育と個体数の把握、森林伐採の管理と捕食性の外来生物の駆除が大事」と述べた。増加傾向にあるオオトラツグミだが、生息の多い中部の森林では飽和状態という。「今後は繁殖状況や幼鳥の比率など、保全に必要な調査が重要になってくる」と結んだ。