県立大島病院救命救急センター講演会

医療のみならず、消防、介護、行政など多職種の聴講者がオンラインを通して参加した(県立大島病院救命救急センター)

災害医療の情報管理学ぶ
「共通言語の設定」「助け合い仕組み化」

県立大島病院救命救急センター主催の2021年度「第5回講演会」が24日、奄美市名瀬の同センター4階研修ホールであった。広島大学大学院医系科学研究科公衆衛生学の久保達彦教授が「離島災害での情報管理」と題し講演。医療関係、消防、介護施設、行政など様々な分野からオンラインを通し約140人が参加。奄美大島で200人超の死者が予想されている南海トラフ地震を想定しての講演だったが、16日未明の津波警報後の避難時、避難場所でも必要となる可能性があった、災害医療の情報管理の在り方を学んだ。

久保教授は、産業医科大学大学院医学研究科博士課程を修了後、同大学の講師、准教授などを経て19年から現職に就任。17年に世界保健機構(WHO)が承認した国際標準の診療日報「MDS」の開発に参加。その元となった「J―SPEED」の生みの親でもある。

講演は、「J―SPEED」を中心に▽災害医療の夜明け・阪神・淡路大震災▽災害公衆衛生の夜明け・東日本大震災▽災害時に必要な情報伝達と実情▽災害対応労働者の安全衛生―など多岐にわたりながら進行。そして改めて「災害」とは、「現地の対応能力を超え、外部からの支援を要請する必要がある状況や出来事」と定義。支援する側とされる側の関係性(受援)をどう組み合わせていくかが、災害対応の本質的な取り組みの一つだと話した。

同センター救急科の渋谷謙一さんは、南海トラフで長期間孤立する可能性がある奄美群島における医療情報、「J―SPEED」の扱い方について質問。それに対し久保教授は、(1)様式の標準化=共通言語の設定(2)助け合いの仕組み化(3)顔の見える「オール大島」の関係づくりが必要では、と回答。災害現場の健康データを即日可視化し、それを関連組織で共有することで横の連携を促し、医療調整・支援資源の配分の最適化を実現した「J―SPEED」の理念と仕組みに通じる解決課題を提示した。

久保教授は講演の最後、奄美の人々へのメッセージとして「今回のような大勢の多職種の参加者を前にした講演は初めて。ここまで『防災感度』が強いエリアであれば顔の見える関係、次の流れも生まれていくのでは」と話し講話を締めた。