環境省(奄美群島国立公園管理事務所)は26日、奄美大島と徳之島のみに生息する国の特別天然記念物アマミノクロウサギの交通事故が、2021年は過去最多だった前年の66件を上回る73件(奄美大島・徳之島合計)になったと発表した。同年7月に世界自然遺産登録となった両島に対し、同事務所は昨年に引き続き、動物が活動する夜間の運転に十分注意するよう改めて呼び掛けている。
アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島のみに生息する固有種で、同省により絶滅危惧IB類に指定されている。日暮れから朝方までに活動する夜行性で、特に秋から冬にかけては繁殖期に入るため活動的になり、道路上に出てくることが多くなるという。
同事務所によるとアマミノクロウサギの前年1年間の交通事故は、奄美大島で過去最多となった20年(50件)を上回る56件、徳之島では2番目に多い17件の計73件。前年確認されなかったアマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミはともに2件で計4件。ケナガネズミは20年の両島6件を上回る計9件となった。
近年、林道だけでなく国道・県道でも事故が発生しており、特に事故の増加が多い車道は、奄美大島では▽瀬戸内町道網野子峠線▽宇検村と瀬戸内町をつなぐ県道58号線▽県道612号線(役勝~篠川間)▽大和村・宇検村周辺の県道79号線。徳之島では▽県道618号線(松原~轟木間)▽県道629号線(手々~金見間)など。
昨年に引き続き、事故が急増した理由を同所の阿部槇太郎所長は複合的な要因が考えられるとしながら、「①野生生物を襲うマングースなどの駆除による生息数の回復②国道、県道の改修により直線の道路が増え、運転時のスピードが出やすくなったからでは」と指摘。アマミノクロウサギなど交通事故多発地点の警戒標識のほか、侵入防止ネットの設置、または、奄美市道三太郎線および周辺に対するナイトツアーの試行ルールの運用で、死体判明件数がゼロとなった道路もあるものの、引き続き夜間運転時の注意を呼び掛けた。
また、同事務所はイヌ、ネコによると思われる捕殺事例も報告。その判定の難しさから、捕殺頭数の実数を示す内容ではないとしながらも、先月、徳之島北部の林道で起きたトクノシマトゲネズミ7匹の大量死を例に、イヌ、ネコの適正飼養も併せて訴えている。
同省奄美野生生物保護センター、徳之島管理事務所では、アマミクノロウサギなど希少種の死体情報を集めている。傷ついたり、死んでいる個体を見つけたら連絡をするよう協力を呼び掛けている。ケガであれば、早めの対応で動物が助かる可能性が高まるという。傷病鳥獣や事故の情報は、同センター電話0997―55―8620、徳之島管理事務所電話0997―85―2919まで。