リュウキュウアユ産卵場かく乱

奄美市住用町の役勝川下流地域で石積みで形成された水路(昨年12月19日)=提供写真

住用の役勝川下流地域「産卵に深刻な影響を」
ヤジ分会報告、初の確認

 奄美大島自然保護協議会ヤジ分会(山下克蔵会長)は1日、絶滅危惧種のリュウキュウアユの産卵場かく乱事案を報告した。昨年7月に奄美大島が世界自然遺産に登録され、国内外からの注目が集まっていた同12月に発見された。同会によると、活動以来初めて確認された事案であり、今後このようなことが起きないよう市民などに向けた周知、普及活動を実施したいとしている。

 リュウキュウアユは野生の個体は現在、世界中でも奄美大島にしか生息せず、本土のアユに比べがっちりした体形で、うろこが荒いのが特徴。県希少野生生動植物の保護に関する条例で、捕獲などが禁止されている。産卵は11月~1月に行われる。

 確認された場所は、奄美市住用町役勝川下流地域。昨年12月19日に奄美リュウキュウアユ保全研究会が、産卵場の確認のため訪れた際に発見され、ヤジ分会へ情報提供された。なお、同月5日の同研究会の訪問時点では、異状は見られなかったという。

 ヤジ分会によると、同下流地域を確認した際、産卵場を分断する形で石積みによる人為的な行為で水路が形成され、石の掘り起こし、石積み作業の際に、相当数のリュウキュウアユの卵が被害を受けたと考えられるとのこと。また、役勝川は奄美群島国立公園第2種特別地域に指定されており、河床に埋まった石を掘り起こし土地(河床)の形状を変更する行為は、自然公園法の許可を要する行為に当たるが、今回の事案は、その許可を得ていない中での行為だった。

 かく乱発見後、聞き取り調査などで、行為者を確認。理由は、カヌーの通り道を川の端に設けるためだったという。今年1月27日に同会から、産卵時期の河床に対するかく乱行為をしないよう注意するとともに、大島支庁総務企画課から自然公園法に基づく指導がなされた。

 同会は「リュウキュウアユの産卵時期に河床を掘り起こす行為が、産卵に深刻な影響を与えることを広く周知し、同様な行為が今後起こらないようにしたい」としている。また、「役勝川や住用川などは、奄美群島国立公園第2種特別地域に指定されており、同様の行為には自然公園法の許可が必要であることも併せて広く知ってもらいたい」と呼び掛けた。