旧家・古民家を再生

阿権集落の活性化拠点に生まれ変わった旧家・古民家の「前里屋敷」=伊仙町阿権

2棟〝寝殿と対屋(たいのや)〟を結ぶ渡り廊下「渡殿」(わたどの)も原形をとどめている

伊仙町、阿権「前里屋敷」 集落活性化拠点に
一般催事利用希望も受付け

 【徳之島】伊仙町が「関係人口と交流人口の創出を図り地域の活性化に」と、同町阿権(あごん)地区で昨年7月から進めた集落活性化推進事業「前里屋敷改修工事」がこのほど完成。創建が「幕末・明治期にさかのぼる可能性」がある歴史的旧家の遊休古民家が、梁(はり)や柱など基本骨格、古き良きたたずまいを温存したまま再生。集落の活性化関連行事を優先しつつ、近く一般催事利用希望も受け付ける。

 阿権は、同町の鹿浦川、阿権川の両渓谷に挟まれた集落。規模は143世帯・272人。高齢化率39・13%、小学児童数22人(全て複式学級)。ご多分に漏れず「少子高齢化対策」が課題の一つ。徳之島を含む奄美・沖縄の世界自然遺産登録に備えて県がルート選定した「世界自然遺産・奄美トレイル」コースもあり、観光客の姿が見られつつあるが、休憩施設や食事処がないなどの課題も引きずる。

 「前里屋敷」は、同集落名物の石垣群とガジュマルの老樹(通称「300年ガジュマル」とも)に隣接。1896(明治29)年12月から伊仙村をはじめ16カ村戸長を務めた平福鼎(ふくてい)氏や、48(同23)年7月伊仙村長に就任した平福次郎氏ら一族代々の屋敷。家屋は木造平屋(2連棟、延べ床面積約197平方㍍)。

 家屋は、昭和6年ごろに改築された、らしいが創建年代については記録がなく不明。外国産材も含めた梁や柱などの骨格からして「幕末・明治期にさかのぼる可能性」の指摘も。本来の「赤瓦屋根」は経年劣化や台風損傷で入手困難となり、雨漏り対策のため家主がコロニアルに葺(ふ)き替えていた。

 歴史的旧家でありながら遊休家屋として放置されていた。町当局の利用希望もあり、福次郎氏の長女・広瀬玲子さん=出水市在住=が敷地(約1250平方㍍)も含め町に寄贈していた。

 町側は、歴史的旧家・古民家の同再生活用を通じ、▽町西部地区に分散した環境学習機能の集約▽健康教育▽住民によるカフェ機能▽農産物を持ち寄った「朝市」など―ふれあいの場の提供(当初計画)を模索。今月4日の町議会臨時会では設置管理条例も制定した。イス・テーブルなど備品が整いしだい、当面は町当局で管理運営。集落行事を優先させつつ、町公式サイトを通じ一般催事希望者も募る方針という。

 問い合わせは伊仙町役場(電話0997‐86‐3111、未来創生課)へ。