がん緩和研修会

県立大島病院初の試みとなったオンライン開催による「がん緩和ケア研修会」(提供写真)

「全人的」対応の必要性説く
初のオンライン開催知識、技術広く習得 県立大島病院

 奄美市名瀬の県立大島病院(石神純也院長)は13日、オンラインによる「2021年度がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」を、同院救命救急センター4階研修ホールでした。09年度以降、対面による集合研修として行ってきた同研修会だが、奄美大島の新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、県内で二番目、同院初の試みとなるオンライン開催となった。自宅、同センター別室から同院に務める18人の医師、薬剤師が受講した。

 同院は、厚生労働省による「地域がん診療病院」として鹿児島大学病院と連携。専門的ながん医療や情報提供、または、相談支援をするなど、奄美保健医療圏の拠点病院として質の高いがん医療を提供している。今回の研修会では、17年に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画に沿い、eラーニングで緩和ケアに関する基礎的知識を受講した修了者を対象に、オンラインによるグループ演習、ロールプレイングなどを実施した。

 集合研修企画責任者で同院麻酔科部長の大木浩医師(58)によると「緩和ケア」とは、がん患者を中心に心臓、呼吸器系の病気、神経難病など治療が奏効しない患者のあらゆる苦痛を予防し、緩和する取り組みを指す。①身体的②精神的③社会的④スピリチュアル的―といった四つの苦痛から判断する「全人的」な対応が必要とされる。

 この日、石神院長のあいさつで研修会がスタート。グループ演習では「すい臓がん」を例に、全人的苦痛に対する緩和ケアの他、がん患者などの療養場所の選択、地域における連携などを実施。ロールプレイングによる演習では、講習者自身が医師役、患者役、観察者役として、それぞれの立場によるコミュニケーションのあり方を学んだ。

 大木医師は同研修会の開催に関し「昨今のコロナ感染対策と研修会開催は、どちらも重要な『二律背反』の問題。しかし今回、オンラインという方法で緩和ケアに関する知識、技術を医療従事者が広く習得することは、患者が抱えるつらさを可能な限り少なくするために意義がある」と語った。

 なお、eラーニング、集合研修など全日程を修了した受講者には、同院と厚労省健康局長連名による修了証書が交付される。