県内初設立の「特定地域づくり事業協同組合」

宿泊客を見送る「えらぶ島づくり事業協同組合」の派遣職員、木内七海さん(左)=知名町フローラルホテル=

夏は観光、冬は農業
「マルチワーク」で人材確保と移住定住促進へ

 【沖永良部】県内初となる特定地域づくり事業協同組合が、沖永良部島に設立されて約1年になる。昨年9月から本格稼働し、I・Uターンした職員を島内の各事業所に派遣している。年間を通じて複数の事業所で働く「マルチワーク」を活用し、島の課題だった人材不足の解消と移住定住の促進に取り組んでいる。

 特定地域づくり事業協同組合は、2020年6月に施行された国の「特定地域づくり事業推進法」に基づく事業で、繁忙期や季節に合わせて組合を構成する事業者に人材を派遣する仕組み。国の財政支援もあり、離島など人口減少の著しい地域における担い手確保の手段として全国の自治体で組合立ち上げの動きが広がっている。

 設立後、昨年5月に県の認定を受けた「えらぶ島づくり事業協同組合」は、全国でも初の2町にまたがり事業を行う。島の基幹産業である農業や観光、介護、総合スーパーなど6業種8事業者が組合員となり、移住者7人とUターン者1人の合計8人を雇用している。年齢は21~34歳で平均年齢は26・5歳。組合の運営費用は国と両町が2分の1を助成し、残りは各事業者が支払う派遣職員の利用料金(税込みで1人当たり1時間1100円)で賄う。

 職員第1号となった木内七海さん(26)は香川県出身。一緒に組合に入った兵庫県出身の友人と2人で移住した。海外の一流ホテルで勤務した経験を生かしてほしいとの誘いを受け、昨年9月から知名町のフローラルホテルでフロント業務を担当している。

 「島で暮らしたいと思っていた。組合に入らずに移住していたら、仕事探しや引っ越しなどもっと大変だったと思う」と話す。

 住居は、和泊、知名両町役場が情報提供し、1年間滞在できて家賃も割安な和泊町の移住定住促進住宅に入居できた。今年1月には同町内に待望の一軒家を借り、引っ越したばかりだ。

 仕事に関しては「ホテルで勤務した経験があるので、フロント業務の難しさや大切さを分かっている。時期が来たら別の職場に行くのは、ほかのスタッフに申し訳ない」と、マルチワークという働き方に悩んだこともあった。就業して半年、次は農業をしようと決めたという。「島には農家が多く、特産品もたくさんある。農業を経験して商品のPRができるようになれば、ホテルに戻って来たときに必ずプラスになる」と笑顔を見せた。

 マルチワークのメリットについて組合事務局長の金城真幸さん(53)は「仕事を変えるには会社を辞めて転職活動をするなど労力がかかる。組合なら多様な仕事に安心して挑戦できるし、同じ仕事に戻ることもできる」と説明する。さらに副業も認めているため「収入を得ながら週末起業も可能。この島で自分がやりたいことを見つけてほしい」と話した。

 本格的に組合が稼働して間もないが、事業者からは職員を増やしてほしいと要望が出ている。金城さんによると、新年度に向けて新たに1人を採用する計画だという。ただし「誰でもいいと考えるのは危険。採用が事業の肝だと思っている。キャリアや能力よりもその人が島に合うかどうかが大事だ」と忠告する。

 組合の目的は地域づくり。移住に対して高い壁がある離島にとって、通年で仕事を確保できて安定した収入を得られるのは、移住定住を進める上で大きなメリットになる。しかし、マルチワークという働き方は島内の事業者の協力なしでは成り立たず、一方で派遣職員を単なる労働力と扱えば事業の目的を達成できない可能性がある。

 人材の確保や新規事業の立ち上げ、空き家の有効活用など、えらぶ島づくり事業協同組合への期待は大きい。離島活性化のモデルとなるのか注目していきたい。
 (逆瀬川弘次)